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東北リポート/山形・鶴岡市の「バイオクラスター」−漢方生薬の産地形成目指す

 鶴岡を漢方生薬の産地に―。山形県鶴岡市は慶応義塾大学先端生命科学研究所(鶴岡市)の研究成果の活用などによるバイオ関連分野の産業集積を目指す「鶴岡バイオクラスター」の形成促進事業に取り組んでいる。2011年度にはプロジェクトの一環として「鶴岡漢方プロジェクト」を始動。12年春には市内の農業法人が漢方薬の原料に用いられる薬草など薬用植物(生薬)の試験栽培に乗り出した。現状、漢方生薬は中国からの輸入が主流。漢方薬の需要増も見込まれる中、日本国内での原料供給の新たな産地としての可能性を探ろうとしている。(山形支局長・大矢修一)

 鶴岡市内の月山山麓に約54ヘクタールの農場を有する90年設立の米作(鶴岡市)。耕作放棄地の再生に向けて同社はすでに枝豆はじめニンジン、赤カブなどを生産しており、漢方薬の原料となる生薬の試験栽培は12年4月にスタートした。漢方生薬の産地化の実現に向けて鶴岡市などと連携して取り組むことになった。

 12年4月からの試験栽培はトウキ、キキョウ、カンゾウの3品種、昨年秋にはサンショウ、シャクヤクなど7種の栽培に乗り出した。現状では農薬を使わない方針で栽培に取り組んでいる。トウキとキキョウについては昨年秋に収穫し、良好な生育を確認した。初年度の試験栽培は農場内の約1ヘクタールを利用しており、今後各品種の発育状況などを把握しながら品種を増やすなど栽培面積を順次拡大していく方向だ。薬用植物は栽培期間が一般の農作物と違って長い品種が多いという。米作の松田茂常務は「新たな一歩を踏み出したばかり」と長期での取り組みを強調する。

 産地化の実現に向けては地元の機運を高めていく必要性がある。鶴岡市と庄内地域産業振興センター(鶴岡市)は、12年11月に市内で「つるおか漢方生薬シンポジウム」を開き、定員を上回る約200人が参加。事例発表として米作の取り組みが紹介された。同シンポでは専門家から国内での生薬栽培の課題として栽培技術の確立はじめ、機械化、種苗の提供先確保などが指摘された。

 この点で鶴岡での取り組みでは、今後の販路の開拓も含め漢方生薬の専門問屋と組むなど、市場性がある品種に絞って専門家の指導も受けて試験栽培に取り組んでいる。種苗の確保についても、問屋や試験研究機関などの協力を得ているという。

 鶴岡での生薬栽培に適した機械化については、「既存の農業機械の改良で対応できる」(松田常務)とみている。プロジェクトの旗を振る鶴岡市は、13年度にも地元の機械メーカーなどを集めて新たな研究会を組織するなど機械化の後押しも含めて長期的にプロジェクトを進める考え。

 またバイオ分野の研究拠点として、メタボローム(代謝物群)解析技術で世界最先端の研究を進める慶応義塾大学先端生命科学研究所との連携で、鶴岡産生薬の総合的な成分評価など科学的な裏付けによる差別化も期待されている。

 プロジェクトでは生薬の乾燥設備の設置はじめ粉末化など加工施設の立地も見据えている。生薬からの成分抽出による食品分野への応用など用途拡大も視野に入れつつ、将来に向けた産地形成を目指そうとしている。


【2013年1月22日 日刊工業新聞社】