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変わる販売促進戦略/馬路村農業協同組合−村の自然や暮らしを発信

 高知県東部の山間にある馬路村は、人口1000人弱の過疎化が進む小さな村だ。かつての収益源だった林業の衰退に伴い、1963年にゆず栽培を始め、今では村の主力産業となった。そのゆずを使った加工品の製造販売を手掛けるのが馬路村農業協同組合だ。ぽん酢やドリンク、化粧品など約50種類のゆず加工品を取り扱い、年間約30億円の売り上げを誇る。

 馬路村では当初、青果としての出荷を見込んでいたが、青果の規格には合わず、販売できないものも多かった。そのため一部をゆず果汁などに加工したが、生産効率は悪かった。山あいの馬路村では小さな畑が点在するため、大規模な管理栽培より、かたちは悪くても有機栽培するやり方が適していた。同組合は、地域特性を生かすために、加工品に特化した販売方針に転換した。

 ただ、同組合の基本方針は「ゆずの加工品を販売するというより、馬路村そのものを売り出す」というもの。商品の売り上げを増やし、農家の収益を安定させるためには「馬路村のファンを増やすことが大切」(営農販売課販売係兼広報係長野桃太さん)と、商品の背景にある村の自然や村民の暮らしなどを積極的に紹介している。村の魅力を発信することで「田舎」「過疎」というマイナスイメージを逆手に取り、商品に「懐かしさ」や「手作り感」「安心感」というイメージを持たせた。

 同組合は村の魅力を伝えるため、パンフレットや新聞を作成している。商品購入者の約60%がインターネットなどによる通信販売での購入。その利用者に対して年3回パンフレットを送付する。このパンフレットは、商品紹介とともに、村の自然や村民の生活風景、ゆず栽培農家や収穫風景などを写真を交えて紹介する。また商品発送時に、毎月発行する村の行事やニュースなどをまとめた新聞を同封する。

 このパンフレットや新聞作りには「日頃の情報収集が欠かせない」(同)と、村内の広報活動も活発化させた。スーパーなどで店頭販売する商品もあるが、同組合では「背景を伝えることが難しい」という理由から通信販売を重視している。

 また、商品ラベルに大きく馬路村と入れるほか、主力商品のゆずドリンク「ごっくん馬路村」のように商品名に村名を使うなど、馬路村を前面に打ち出した商品作りを展開。この結果、村の知名度も高まり、現在では年間6万人の観光客が村を訪れるようになった。 ゆずには捨てる部分が無いといわれる。果汁からポン酢やドリンク、皮からはジャムやゆずこしょう、ゆず茶を作れる。11年にはこれまで廃棄していた種からオイルを抽出し、化粧品として商品化した。

 同組合は、将来的に年間売り上げ50億円の目標を掲げる。現在の収穫量でもゆずを有効利用すれば十分可能だ。ただ、「売り上げも大切だが、ゆずの可能性を追求していくことが重要」と、今後も化粧品分野を中心に商品開発を進める方針だ。

 同組合では「我々のやり方は時間が掛かるが、こうした顧客とのつながりを大切にしていきたい」と、村の魅力を発信し続け、さらなるファンを獲得していきたいとしている。


【2012年11月23日 日刊工業新聞社】