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関西リポート/丸紅・近畿大と産学連携−近鉄発レタス初出荷

 近畿日本鉄道は植物工場で生産した野菜「花吉野からやさい。」の1号商品を、19日に初出荷する。今回出荷するのはフリルレタス(129円)で、20日に近鉄グループのスーパー「近商ストア」38店舗で販売を始める。少子高齢化で需要が減少するなか、新事業への参入が進む鉄道業界。近鉄が丸紅、近畿大学との産学連携で取り組む農業ビジネスの動向が注目される。(大阪・吉岡尚子)

 近鉄が所有地に建設した農業施設「近鉄ふぁーむ花吉野」(奈良県大淀町)は植物工場と農業用ハウスからなり、7月末に生産を始めた。植物工場は栽培場の面積約210平方メートルで、レタスなどの葉物類とラディッシュなどのミニ根菜類を栽培。農業用ハウスは同約5300平方メートルで、高糖度トマトを栽培する。収穫量は、植物工場は3年目で年間約40万株(すべてフリルレタスの場合)、農業用ハウスは4年目で年間約60トンを予定する。投資額は約3億6000万円で、2014年度に年間約1億円の売り上げを目指す。

 完全人工光型の植物工場は、丸紅が開発した土耕式植物工場システムを採用。ピートモスに粘土の一種のモンモリロナイトをコーティングした有機人工土壌「ヴェルデナイト」を用い、無農薬で栽培できる。肥料や水分の保持力に優れ、従来の水耕式では難しかった根菜類など、多品目の栽培ができるのが特徴だ。

 農業用ハウスでは、丸紅と近大からの助言のもと、吸水性の高い膜のハイドロメンブランを用いたフィルム農法「アイメックシステム」を採用。食物に水分ストレスをかけて育て、高糖度なトマトを栽培する。トマトは11月に出荷予定だ。

 野菜は近鉄グループの流通店舗やホテル、レストランで販売・提供する。今後の3者の連携は、近大が丸紅の協力で新品種や栄養価の高い野菜を開発し、植物工場で試験生産。近鉄がそれを試験販売し、商業化のめどがたてば生産・販売していく。

 課題は収益性と生産ノウハウだ。現在は発芽は7、8割程度と、栽培ノウハウは完全ではない。教育やマニュアル化などで生産スキルを向上し、4年目に単年度黒字化を目指す。

 近鉄の小林哲也社長は「当社には沿線土地、物流、流通があり、農業ビジネスの一貫した仕組みがある。しっかり検討したうえで拡大したい」と意欲をみせる。農業施設がある地区は、同社が宅地開発を進めているほかメガソーラー計画もあり、「ここを総合的なモデル拠点にできれば」と、所有地の有効活用と沿線価値向上を狙う。

 関西の私鉄では、阪神電気鉄道が鉄道高架下に植物工場を12年1月に完成、2月に初収穫した。近鉄、南海電気鉄道はメガソーラーを設置する計画があるなど、所有地を活用した新事業への参入が続く。地域連携や地域貢献も兼ねた新たな収益策に期待が高まる。


【2012年9月19日 日刊工業新聞社】