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つくろう!日本・東日本大震災1年半/高級食材を狙え

 東日本大震災で被災した東北地方の水産関連業界に新風が吹いてきた。ターゲットは高級食材。世界有数の漁場で豊かな水産資源を持つ三陸地方の特性を生かして、高級食材の効率的な生産、市場の開拓に挑もうとしている。自然の恵みを最大限引き出すために、新たな技術を導入し従来以上に質の高い水産品を生産するのが特徴。被災地ではこれまでと異なる新しい産業を興そうという機運が盛り上がってきている。

 岩手県大船渡市漁協赤崎支所が導入したのは、ヤンマーが開発したカキの人口種苗(シングルシート)養殖方式。海に浮かべた「フラプシー」と呼ぶ中間育成装置で、直径2ミリ―3ミリメートルの稚貝を7センチ―9センチメートルまで育てて出荷するもの。陸上種苗生産技術で育成した稚貝を使い、品質の高いカキを短期間で効率的に生産できるのが特徴だ。ホタテの貝殻を使う一般的な方法の場合、出荷まで3年ほどかかるが、ヤンマー方式であれば1年で出荷できる。一回に養殖できるカキも通常の3万―4万個から50万個へと飛躍的に増加。養殖時の生存率は従来の30%から90%に大幅に伸びる。

 大船渡市赤崎地区のカキは「赤崎カキ」と呼ばれる高級食材。ふっくらとした丸みを帯びた身で、東京築地市場で高値で取引される。これまでも高級品として取り扱われてきたが、新技術を導入して養殖の効率化、製品の一層の高付加価値化を図る計画だ。

 漁業関係者は「大船渡湾はカキの養殖にとって最高に恵まれた環境だ。新しい技術の導入で、これまで以上に質の高いカキを生産できる」と話す。赤崎カキの第一人者の志田恵洋氏も「この方法は短期間で効率的に最高品質のカキを生産できる」と太鼓判を押す。

 今回の取り組みは水産庁の復興支援制度「がんばる漁業復興支援事業」を活用し、中間育成装置などはヤンマーが地元漁業協同組合に貸し出した。将来はカキの稚貝販売などで事業を拡大する考えだ。

 石巻魚糧工業(宮城県石巻市)も高級ナマコとアワビの陸上養殖に乗り出す。弘前大学の渋谷長生教授らと共同で、高級中華食材の養殖技術や販路開拓を行う。稲井幹男社長は「旧に復するだけではダメで、新しい産業を興すという気概が大事だ。三陸という世界有数の水産資源を活用して、地域の復興に貢献したい」と意気込む。

 今回の事業は科学技術振興機構(JST)が実施する「復興促進プログラム」の第1回採択案件。同社は加工した魚介類の残さなどを利用して生産した飼料原料が主力で、新たな収益源の確保を目指す。

 水産加工にも高級食材に挑む動きが出てきた。味の加久の屋(青森県八戸市、野田一夫社長、0178‐34‐2444)は、ズワイガニの爪肉を使った「味の加久の屋 クイーンクラブ〈粒撰りクロウ〉」の販売に乗り出す。これまで和食中心だったが、洋食に参入して売り上げ増を狙う。カニ爪を使ったレシピを高級レストランや高級スーパーに提案する。

 水産関連の6次化産業に詳しい宮城大学の鈴木康夫教授は「震災から1年半がたち、水産関連業の中に新しい産業を興そうという機運が高まってきた。少子高齢化が進む被災地ではイノベーションなき復旧・復興は衰退を招く可能性があり、こういった企業の動きは歓迎すべきだ」と話す。


【2012年9月11日 日刊工業新聞社】