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被災地に植物工場の新設相次ぐ−東北の農業復興のシンボルに

 東日本大地震で被災した東北地方で、植物工場の新設が相次いでいる。グランパ(横浜市中区、阿部隆昭社長、045-663-7967)は岩手県陸前高田市に半球ドーム形の植物工場を建設しており、8月4日に完成式を開く。さんいちファーム(宮城県名取市、瀬戸誠一社長、022-383-8831)は水耕栽培の植物工場を完成し、野菜の販売を始めた。東北の農業復興のシンボルになりそうだ。

 グランパの植物工場「グランパファーム陸前高田」は、関係会社のグランパファーム(神奈川県秦野市)が運営を手がける。三菱総合研究所が事業化調査(FS)や地元人材の紹介などを担当した。半球形のドーム工場8棟がほぼ完成しており、レタスの苗などの植え付けを始めた。ドーム形状により、柱の陰に光が差さずに生育が悪くなることを防いだ。1棟の面積は約1000平方メートルで、太陽光も利用してコストを抑える。一日当たり450―500株の出荷を目指す。

 一方、さんいちファームの植物工場は約2000平方メートルの建屋3棟で、津波で塩害被害を受けた名取市内の農地1万2000平方メートルの約半分の敷地に建てた。空冷式ヒートポンプで根の部分だけを温度管理する方法を採用し、コストを抑えた。レタス、サラダホウレンソウ、イタリアンパセリなどを栽培しており、エコヒルズ(東京都港区)を通じて野菜のお試しセットのインターネット販売を始めた。スーパー、外食産業への販売も模索している。

 グランパの阿部社長、さんいちファームの瀬戸社長とも「被災地の一日も早い農業復興につなげたい」と口をそろえる。三菱総研によると被災6県の農地のうち1年後に復旧したのは32.9%。陸前高田市は3%にすぎない。農地の塩害処理が進まず、農業従事者の転出や高齢化もあり、復旧が遅れている。露地栽培は難しいのが実情だ。

 一方、植物工場は水耕栽培のため、塩害のある農地でも直ちに始められる。また年間を通じて栽培できる。阿部社長は「安定供給できるし、高品質なので露地栽培との差別化も図れる」と強調する。植物工場には初期投資、光熱費などのランニングコスト、販路開拓といった課題もあるが、復興に向けた解の一つになっている。

 【間伐材で林業復活】

 東北地方の間伐材などを活用し、林業復興につなげようとする動きも広がっている。木楽創研(岩手県大船渡市、熊谷秀明社長、0192-47-3242)は、岩手県陸前高田市内の農地に間伐材を使った農業用ハウス2棟を建設し、8月半ばにオープンする。また木づかいビジネス協議会(東京都中央区、鳥井龍吾代表理事、03-5623-5535)は、津波被害を受けた木材などの使用を条件にした「東北材デザインコンペ作品」を募集している。

 通常、農業用ハウスの骨格にはスチールパイプが使われている。間伐材を用いるアイデアはあったが、多用すると日光を遮ってしまうため、作物が育ちにくくなるのが悩みだった。木楽創研はハウスの支柱に屋根柱2本を組み合わせる独自工法で日照問題を解決し、曲がったり、節目がある間伐材を利用できるようにした。同社は「農業用ハウスのほか、駐車場の屋根や牛舎、鶏舎にも利用できる」と期待を寄せる。需要に応じ、間伐材の製材工場の新設も視野に入れる。間伐材の収集・運搬を含めて雇用創出につなげる考えだ。

 一方、木づかいビジネス協議会のコンペは文房具や玩具、インテリアなどの優秀作品をデザインバンクに登録し、企業が商品化を決定した場合にロイヤルティーが支払われる仕組み。「一般部門」「企業ノベルティー部門」「東北おみやげ部門」「野球・サッカーグッズ部門」を設定しており、31日まで募集している。


【2012年7月11日 日刊工業新聞社】