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地元シニア、農業で雇用−生きがい・土地活用に貢献

 農業が定年退職後などの雇用の受け皿として見直されている。作物を育てる喜びや地域とのふれ合い、健康維持などの効果も期待できるほか、耕作放棄地の活用にもつながっている。生産性の向上や規模拡大を求める農業ではなく、生きがいや地元雇用を目的とした農業。高齢化社会に対応した新たな農業・農村の姿が見えてくる。(編集委員・嶋田歩)

 【健康・楽しみ】
「定年退職後も仕事をしたい高齢者はたくさんいる。人手の確保には困らなかった」。ナガホリ(埼玉県上尾市)の永堀吉彦社長はこういう。ここの地元は外食産業や運送産業などの若者向けの職場はあるものの、高齢者向けは少ないのが実情だ。

 ナガホリの社員は7人しかいないが、パート社員は約180人もいる。このほとんどが高齢者で、定年退職後の雇用の受け皿になっている。経験などに応じ、耕作放棄地を整備する「草取り班」、ハウス整備をする「施設班」、収穫専門の「収穫班」、作物を箱詰めする「仕分け班」などを組織し、コマツナやタマネギを生産している。

 月給は10万円強。だがパート社員からは「年金と合わせると食うには困らない。また農場に出ることで健康になった」「仲間との会話が楽しい」といった声が上がる。

 農業は草取りや収穫時などに大量の人手を必要とする。高齢者を雇用してこうした課題を解決。専門性の高い作業は社員、一般作業はパート社員と役割分担することで生産性を上げている。

 【定年後の起業】
青森県鶴田町の津軽ぶどう楽園。高齢者らのオーナーが10アール当たり年間2万円の料金を払ってブドウを栽培している。生産指導、肥料や農薬の調達、販売は津軽ぶどう楽園が担当。薬剤散布などの専門的な作業も1回1000円で提供する。

 青森県はリンゴのイメージが強い。だがブドウを選んだ理由について三橋宣治執行役員は「リンゴは収穫箱の重量が20キログラム前後になり、体力のない高齢者にはきつい。この点、ブドウは作業が楽。栽培している『スチューベン』はニューヨークで開発された品種で青森の気候に合う。甘味が強くて人気がある」と説明する。オーナーの手取りは月5万円程度だが、中には60万円を稼ぐ人もおり、“定年後の起業”とも言えそう。

 【都市型も実験】
千葉県柏市や東京大学、UR都市機構などで構成する「柏市豊四季台地域高齢社会総合研究会」では、周辺農家の協力を受け、休耕畑で都市型農業事業を展開している。団地の敷地に設置した「ミニ野菜工場」、「屋上農園」でのモデル実験も始めた。

 農林水産省では「女性の場合、子どもやボランティア活動などで地元での付き合いがある。一方、男性の多くは会社での人間関係が中心のため、地元での付き合いが少ない。生きがいを失ってしまう人も多い。農業はこうした問題の解の一つになる」(同省官房政策課)としている。


【2012年5月18日 日刊工業新聞社】