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観光復興(上)栃木県・日光−魅力発信で風評払しょく

 栃木県の日光と福島県の会津若松の観光産業に、立ち直りの兆しが表れ始めた。東京電力福島第一原子力発電所事故による放射線の風評被害で一時は前年比9割減となったものの、日光では例年並みに客足が回復した旅館があり、会津若松でも「1月から団体客が戻ってきた」(鶴ケ城近くの土産物店)。県外からの修学旅行再誘致に向けた地域挙げての学校訪問や、市内放射線量のきめ細かい公表が安全性の理解につながっている。(栃木・杉浦武士、新潟・阿部正章)

 日光市では風評被害払しょくに向けた企業の動きが活発だ。テーマパークの日光江戸村を運営する時代村は、外国人に大人気の忍者を武器に、2007年から外国人観光客を呼び込むインバウンド活動に取り組んでいる。年間来場者約28万人の1割を外国人が占めていたが、震災で外国人比率は数%に落ち込んだ。しかし、震災以降、シンガポールやロシアなど7カ国・地域を訪れ、今年もタイやマレーシアに出向き、インバウンド活動に引き続き力を入れる。

 旅館「日光千姫物語」などを運営する春茂登旅館はリピート客の比率が約7割と高い。同社は震災直後に復興計画を策定し、昨年10月にはいち早く例年並みに客数が回復した。根本芳彦社長は「自助努力で魅力を発信するたくさんの仕掛けが必要。インバウンドもその一つ」と話す。

 行政側も奮闘する。1月から市内の観光名所約30カ所に職員を派遣し、計測した放射線量をホームページで公開。2月には市が購入した測定器で、市内の旅館で提供する食材の放射線量測定サービスも始めた。併せて市と栃木県は関東地方の教育委員会に放射線量が低いことなどの説明に奔走中。だが、現在のところ「12年度についての見通しは不透明」(市観光課)という。

 一方で日光については「二社一寺などを訪れる固定客への依存度の高さは昔から指摘されていた」と新井俊一日光観光協会会長。現在の日光市は06年に今市市などの旧4市町村と合併して誕生した。地区によって強みとなる観光資源が違うため誘客の主導部隊となる観光協会の統合が遅れていたが、ようやく13年に統合の方向となり、オール日光での誘客の基盤が整う。

 そうした中、斉藤文夫市長が「相乗効果を生み出していきたい」と期待するのが5月にオープンし、年間2000万人以上の来客が予想される東京スカイツリータウン。栃木県と市町村共同によるアンテナショップ「とちまるショップ」も出店。県産品をそろえ、観光情報の発信基地とする。

 市は12年度予算でスカイツリーなどに関する観光宣伝費に2億2000万円を計上。県も風評被害対策費として1億円強を盛り込み、風評被害を乗り越える構えだ。

【安全宣言 2回】
 東京電力福島第一原子力発電所から150キロメートル離れた日光市には世界遺産である日光東照宮など二社一寺が存在し、例年、年間1100万人以上が訪れる。修学旅行生は同30万人以上訪れ、地元のホテル・旅館の大きな収益基盤だが、原発事故直後は一時、前年比約9割減。「日光東照宮でさえ数十人程度しか人が歩いていない状態だった」(日光市観光振興課の塩谷弘志課長)。原発事故直後の日光市の放射線量は毎時1マイクロシ−ベルト(マイクロは100万分の1)を超えたが、現在は同0.1マイクロシ−ベルト前後。市は、観光安全宣言をすでに2回出している。


【2012年3月22日 日刊工業新聞社】