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東日本大震災1年/東大と日本財団、養殖の早期再開を支援−ロボで海底調査

 東日本大震災で地元の養殖業と水産加工業は甚大な被害を受けた。宮城県南三陸町の志津川湾もその一つ。養殖は海産物の育成に時間がかかるため、再開が長引けば長引くほど、その間の収入は途絶える。そこで少しでも復興の速度を上げようと、東京大学海洋アライアンスと日本財団が、水中ロボットを使った海底調査で支援に名乗りをあげた。震災から1年がたった今、調査の成果と今後の課題を追った。(政年佐貴恵)

 「なんとかワカメの時期には間に合わせたかった」―。南三陸漁業生産組合の菅原忠功総務部長は、作業する手を止めずに、こう打ち明けた。志津川湾は、2011年10月頃から再開した養殖ワカメの水揚げの真っ最中だ。例年よりも若干少ないながらも、水揚げ量はほぼ100%まで戻り、忙しい日々が続く。

 同組合は漁協に所属する12人が出資し合って12年1月に設立した。これまでは個人で養殖をしていたが、生産コストや効率を考え、協力する道を選んだ。それもこれも今年のワカメの収穫に間に合わせるため。ワカメは比較的短期で収穫でき、すぐに収入になる。今年の再開を逃せば、1年を棒に振ることになる。養殖再開には、海底の状況把握とがれきの撤去が喫緊の課題だった。

 「どのくらいがれきが残っているのか、状況を知りたい」という漁業関係者らの要請を受けて、東京大学と日本財団が海底調査を始めたのが11年5月。ダイバーが調査できない水深20メートル以上の海底を計3・3平方キロメートルにわたって網羅的に調査した結果、沖合よりも沿岸部にがれきが集積していることが判明。9月の追加調査と合わせて、湾内のどこにどんながれきがあるかを一覧にし、これを元にがれき撤去や漁場設置の計画を立てた。

 宮城県漁業協同組合の関係者は「ロボットで海底の様子を見られ、再開の道筋が立てやすかった」とし、同組合志津川支所運営委員会の佐々木憲雄委員長も「がれきの把握は再開に向けた励みになった」と評価する。生産者も「がれきの撤去には役だった」と感じており、ロボット調査の有効性は示された形だ。

 とはいえ、全てのがれきが撤去できたわけではない。日本財団は「具体的な時期は東大と調整するが、養殖再開から1年になる秋ごろにでも次の調査ができれば」と、継続的に支援する構えだ。今後のがれき撤去の計画を見据え、宮城県と漁協は沈んだ船などが発見され、引き上げた場合の影響について1月に意見交換した。ワカメの旬を過ぎた5月以降に調査を再開する案が出たが、タイミングを計りづらいのが現実だ。

 ワカメを皮切りに、3月のカキ、6月のホタテと続く養殖の準備で、生産組合ではフル稼働の毎日が続く。「フル稼働でないとお金にならないから」(菅原総務部長)。ようやく見えてきた復興の道を遮らずに、どうやってがれき処理を進めるのか。慎重な計画の策定が求められる。


【2012年3月8日 日刊工業新聞社】