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愛知・尾張地域の繊維産業、加工技術で新市場参入

 繊維産地として関連企業が集積してきた愛知県尾張地域。近年は安価な海外衣料品や繊維製品の流入で産地企業の多くが厳しい経営環境に直面している。現状を打破すべく自社の繊維加工技術を生かし工業分野などを開拓する企業も出てきた。産地で企業間連携や技術開発を支援する地元の商工会の経営指導員も「他分野への取り組みで技術を高めるチャンスが生まれる。産地活性化のためにも先陣を切る企業が必要」と期待する。(名古屋・伊藤吉登)

 シバタテクノテキス(愛知県一宮市、柴田昇社長、0586‐87‐6446)は他の繊維関連企業4社と共同でポリエステルに銅を織り込んだタッチセンサーを開発した。布に触れると導線がセンサー代わりになって電気信号を伝える製品。人が触れることで電気スイッチなどとしての利用を見込む。

 衣料向けでステンレスの糸など異素材の織物を手がけた経験を生かして開発。ベッドのシーツに縫いつけてテレビや蛍光灯のスイッチなどとしても利用可能という。展示会に出展したところ介護や子ども製品向けで引き合いがあった。柴田和明取締役は「衣料に次ぐ事業の柱にしたい」と製品化を急いでいる。

 トレステック(愛知県大治町、佐々木敏哉社長、052‐442‐6243)は無縫製で立体的なニットを製作する無縫製型横編み機を使い、帽子などを製造する。現在は「他社がやらないもの、季節によって売り上げが左右されないものを手がけたい」(佐々木社長)と新商品開発に注力中。無縫製の赤ちゃん用だっこひももそのうちの一つで、継ぎ目がなく装着感に優れている点が評価され、年間5万本を売るヒット商品になった。

 2011年6月には約2400万円を投じてクリーンルームを設置したほか専用編み機やCADを導入し、心臓疾患の治療に使う矯正ネットなど医療デバイスの研究も進めている。佐々木社長は「炭素繊維を編む技術もあり、工業資材分野も開拓したい」と意気込む。

 進弘産業(愛知県一宮市、伊藤誠宣社長、0586‐69‐1121)の主力はインテリアメーカー向けの特注カーテンの縫製。今は安価な海外製カーテンの流入で高級カーテンの縫製だけでは厳しい状況だ。このためレーザー加工機やプレス機を使って、星形や花柄など顧客が好む図柄を切り抜き、カーテンの布地表面に貼り付けるサービスを考案。「猫好きの顧客には猫の柄を貼り付けている」(伊藤社長)。

 本来、生地の織りで図柄を表現するには、ある程度まとまった生産量が必要だが、このサービスなら1品ずつの製作が可能。この世に一つしかないオリジナリティー溢れる商品の製作・提供で顧客の心をつかむ考えだ。すでに個人だけでなくハウスメーカーやホテルなどからも注目されている。

 事業者数の大幅な減少など危機に立たされる産地―。一方で「作る物が変わっても先人から受け継いだ技術は脈々と生きる」(地元商工会の経営指導員)と話す通り、長年培った繊維加工技術で特徴ある製品を生み出せる企業も多い。活躍の舞台を新たな市場に求める企業が、産地の活性化を担う。


【2012年3月5日 日刊工業新聞社】