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農商工連携の今(88)粟を使った料理・菓子

 奈良市南部の精華地区はのどかな中山間地域だ。奈良市と統合するまで五ヶ谷村という名称だったが、より古くはこの一帯を「清澄(きよすみ)の里」と呼んできた。奈良盆地を一望する丘に立つレストラン「粟(あわ) 清澄の里」は、「椿尾ごんぼ」や「大和マナ」など多種多彩な伝統野菜を使った料理が評判で、一日20席の完全予約制ながら店はいつも予約でいっぱいだ。

 レストランの運営会社、粟(奈良市、三浦雅之社長、0742-50-1055)は、清澄の里と奈良市内の古い門前町「ならまち」で計2店舗を経営する。三浦社長と専務で妻の陽子さんはもともと福祉と医療の仕事に就いていたが、中山間地域の農村共同体や地域資源の活用などへの関心が高まり、現在の地域活性化事業を始めた。

 「地域に産業を興さない限り、地域の活性化はない」と考える三浦社長は現在、粟の経営者、NPO法人「清澄の村」理事長、「五ヶ谷営農協議会」企画担当と三つの肩書を持つ。営利、非営利、共益の3団体がうまく役割分担して「地元が主体となる地域活性化」に取り組んでいる。

 取り組みの中心は市街地近郊の農業振興地域という地理的条件を生かした大和(やまと)伝統野菜の栽培だ。五ヶ谷営農協議会を構成する地域の有志農家が伝統野菜を栽培し、粟がレストランで調理・販売する。住民も運営に参加する「清澄の村」は伝統野菜の調査・研究、野菜の種子と栽培技術の保存、地域資源の発掘を担当する。

 三浦社長はレストランを開く前に大和伝統野菜を調査・研究しながら地域の農家に農業を学び、レストラン用地も自力で開墾した。1955年ころから発展が止まっていた伝統野菜の栽培技術は、農家の協力のもと「現在は効率的な栽培・収穫がほぼ確立できた」(三浦社長)という。

 2月には大和伝統野菜を使った和菓子の商品化事業が農商工連携事業の認定を受けた。もち米のような食感が出る粟「むこ(婿)だまし」と2種類の小豆を使った和菓子「粟生(あわなり)」は、この10月に収穫する粟を使って生産し、本格発売する予定だ。

 むこだましは今年130キログラム以上の収穫を見込むが毎年量を増やし、5年後に粟と小豆の生産農家2軒で計500万円、加工・販売を担当する粟が2600万円の売り上げ増を目指している。「粟生」は粟の収穫量が限られるため、当面はレストランと店頭だけで販売する計画だ。今後はまくわうりのシャーベットやこぶ芋の干し芋などの新商品も追加するという。


【2011年9月5日 日刊工業新聞社】