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農商工連携の今(87)高冷地野菜用いた和洋菓子

 江戸時代に中山道の宿場町として商業を中心に栄えた岩村田宿。和泉屋菓子店(長野県佐久市、阿部真一社長、0267‐68‐5000)は、宿場町の雰囲気を残した岩村田本町商店街に本店を持つ1920年創業の老舗菓子店だ。同商店街は97年の長野新幹線開業、翌年の長野冬季五輪を境に大型商業施設などが相次いで出店し、苦戦を強いられるようになった。

 「自分の店を強くしなければ」。和泉屋菓子店4代目の阿部社長は同じ悩みを持つ商店街の有志とともに後継者育成の講座を立ち上げた。その中で「菓子屋とは菓子文化創造業である」との思いを強くする。地域文化を支える者として地元野菜を使った菓子の商品化を考えるようになった。

 それまで主体としてきた結婚式場やホテルにケーキなどを納品する経営方針を転換。阿部社長は店舗向け商品のマンネリ化に頭を痛めてきたが、「農作物の加工品としておいしい菓子づくりに徹すれば優位性が出る」と考えた。そこで地元を見回すと「佐久地域は野菜や果物の宝庫だ」と気付いた。

 6年ほど前に商店街イベントで栽培した野菜を熱心に販売する信州森のファームチロリン村(南牧村)の菊池千春氏に出会い、有機肥料で土づくりから始める独自農法にほれこんだ。折しも地元を訪れた関東経済産業局幹部の薦めもあり農商工等連携支援事業計画に応募。2008年に標高1300メートルの高冷地で栽培する野菜を用いた和洋菓子の製造販売事業に認定された。

 特に菊池氏が栽培する「森の花豆」は糖度が高く、粒が大きいという。11月に収穫し、約2トンの全収穫量を和泉屋菓子店が買い取る。同社の方針で農家も安心して栽培に取り組めるようになった。花豆は小豆に比べて材料費が3倍になるため菓子用に不向きとされてきた。そこで規格外のものをこしあんに使うことで商品開発の道が開けた。

 昨年12月に花豆を使った菓子販売をスタート。これまでパイ、大福、ロールケーキなど10種類を商品化した。生産者の顔が見えることもあり、おいしさや食の安全性に敏感で軽井沢などを訪れる都会からの観光客に好評で売れ行きも好調だという。農商工連携を契機に20の農家と契約を結び、カボチャやトウモロコシなどを使った菓子も発売。いまでは地場産の野菜や果物をほぼ100%使用する。今後も地元客を中心に「地域発のなくてはならない菓子店を目指したい」と意気込みをみせる。


【2011年8月22日 日刊工業新聞社】