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東日本の交通機関・観光地、避暑で客足戻せ−“節電”レジャー喚起

 運輸・観光需要は確実に回復基調に乗っているようだ。東日本大震災の影響は依然として残っているものの、交通機関も需要喚起に力を入れ、夏休みの観光地への送客は好調だ。とくに節電で暑さが増す今夏は例年以上に避暑地に人が集まりそう。落ち込んだ需要の復活を目指して施策を展開する交通機関の取り組みと、避暑地の現況を取材した。(江刈内雅史)

【SLがけん引】

 「お客さまが戻ってきました。SL(蒸気機関車)が走る日は客の入りがさらに増える」―。群馬県と新潟県の境にある谷川岳の麓の水上温泉郷(群馬県みなかみ町)。あるお土産屋の店員は観光客の戻りを満足げに語る。

 高崎駅(群馬県高崎市)から温泉郷の玄関口である水上駅をつなぐ上越線では、7月からこの区間でSLが蒸気のうなりを上げて走っている。

 同月に始まった「群馬デスティネーションキャンペーン(DC)」。SLはこの一環で運行する臨時列車で、DC終了の9月まで、奥利根の峡谷をぬいながら涼を求める客を水上まで運ぶ。SLが止まる駅では人々がカメラを向け、その人気ぶりがうかがえる。

 震災の影響は被災地から離れた水上にも及んだ。前出の店員は震災直後は「お客さまが全く来なくなった」と振り返る。平均温度が東京より数度低い水上は避暑地としても名高い。かき入れ時の夏場が心配されたが、8月の予約は概ね満席というSLが客足を支える。

【6月から持ち直し】

 JRグループと自治体、観光事業者が一体となってその地の観光を盛り上げるDC。実際、4月から7月までにDCをした青森県では、3月に前年の6割に激減した県内の主要施設の観光客数が6月以降に前年以上にまで持ち直した。水上も「今回のDCをきっかけに多くのお客さまにきていだたくことに最大限力を入れる」(岸良昌みなかみ町長)とDCを足がかりに街を挙げてさらなる誘客拡大に意気込む。

 一方、航空会社も震災以降、今年初めてお盆期間中に特割便を設定したり、特割の割引率を大きくしたりして、需要のてこ入れをしてきた。その効果はお盆期間中(8月12日―21日)の航空機の予約状況に表れた。

 ANAの5日時点の予約状況は国内線が約128万人(前年同期比7.9%増)、国際線が約19万人(同14.3%増)といずれも予約数が前年を上回った。予約率も国内線が65.3%で前年より2.4ポイントと上昇。国際線も86.7%で前年の1.8ポイント減と前年並みをキープしている。JALも昨年より提供座席数を2割削減したため、予約数は前年を下回ったが、国内線の予約率は前年より約10ポイント向上した。

 国内の方面別で人気が高いのは北海道だ。とくにANAの便は前年同期比17.0%増と高い伸びを示す。JALの国内線も沖縄がトップで北海道がそれに次ぐ。ただ予約が好調な北海道も、この観光王国もまた震災の影響を引きずっている。避暑を求める人の増加で、夏休みの観光の活性化が期待されるところだ。

【国内客から底上げ】

 JR札幌駅そばの札幌エスタ構内にある「札幌らーめん共和国」。年間110万―120万人が訪れる人気スポットだが、震災直後の客数は前年の80%程度にまで落ち込んだという。

 その後は徐々に回復し、6月で前年の93%にまで客足が戻ったが、客の1割を占めていた外国人観光客の動きはまだ鈍い。沼田初札幌らーめん共和国館長は「原発の風評被害がどこで止まるかが問題。肉牛の放射能汚染の件も海外の人に問題としてとらえられたらまた影響が出る」と心配する。6月になってから少しずつ姿を見せ始めた外国人観光客だが、今後、どの程度上向くかは不透明だ。

 もともと観光客に外国人の比率が高い北海道。その回復が見通せない中、国内客を底上げする施策が欠かせない。

 来年は7―9月に北海道でDCを行う。それに先立ち、北海道、JR北海道などは現在「プレデスティネーションキャンペーン」を展開中だ。期間中の9月まで臨時列車の運行や各種イベントを実施。また北海道の貧弱な交通ネットワークを補うべく、バス、レンタカーなどの2次交通機関の充実を進めている。

 7月13日に開いた「全国宣伝販売促進会議」では、北海道の各地域の名産品や観光名所などを旅行代理店の商品企画担当者にアピールし、北海道の旅行商品づくりを促した。会議の中で、中島尚俊JR北海道社長は「来年に向けプレキャンペーンより充実した企画を練っている。みなさまが楽しめる企画を考えていきたい」と来年のDCに注力する姿勢を示した。

 震災で深刻な打撃を受けた観光産業。その傷はまだ完全には癒えていないが、各社の需要喚起策の効果もあり、徐々に活気を取り戻している。


【2011年8月11日 日刊工業新聞社】