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農商工連携の今(86)スイゼンジノリ抽出物活用

 福岡、熊本両県で3事業者のみが食用に養殖する「スイゼンジノリ」。九州の限られた湧水のみで育つこの藍藻(らんそう)を食品以外に用途拡大しようと取り組んでいるのが、2007年設立のグリーンサイエンス・マテリアル(熊本市、金子慎一郎社長、096-319-3800)だ。

 同ノリから抽出した多糖類「サクラン」は、化粧品や医療、工業分野で利用できる可能性がある。同社は抽出技術を持ち、企業や大学との連携で「情報の交通整理役」(金子社長)を果たす。

 農商工連携の認定を受けたのは10年10月。養殖業者の喜泉堂(福岡県朝倉市)、化粧品原料メーカーの大東化成工業(大阪市旭区)、化粧品の企画開発会社のアクアサクラム(熊本市)がメンバーだ。

 補助金やPR効果、信用度の向上も期待して申請した。グリーンサイエンスは技術の管理と開発に特化。喜泉堂とは効率的な養殖法を共同研究しており、抽出は大東化成工業が担当する。

 アクアサクラムはサクランを使った化粧品の企画・開発・販売を目的に10年2月、金子社長らが個人出資で設立した。「新規の材料が採用されるまでには大きな壁がある。乗り越えるために商品化の実績が必要」(金子社長)と判断したからだ。

 グリーンサイエンスは設立以来、機能を前面に押し出してサクランを化粧品の原料としてメーカーに売り込んだが思うように採用されなかった経緯がある。また「BツーBに特化して、一般に販売する化粧品事業とは明確に分けたかった」(同)という思いもあり、化粧品専門会社を作った。

 事業化で最も進んでいるのは、サクランの高い保水性を生かして化粧品原料にすることだ。アクアサクラムは10年11月に化粧水、11年2月に美容液を発売。年内にはパック用ローションの発売も予定する。

 通信販売が主体だが5月に熊本市、6月には福岡市の百貨店で販売を始めた。また国内化粧品メーカー2社も商品化を検討中という。

 サクランはほかにアトピー性皮膚炎の予防や治療などの医療分野、レアメタル(希少金属)やレアアース(希土類)の吸着回収などに使える可能性がある。

 農商工以外に大学との連携も活発だ。北陸先端科学技術大学院大学のほか熊本大学、金沢大学、崇城大学、高知大学と共同研究している。金子社長は「これからも大学や企業とのネットワークは広げていく」と、連携の拡大を事業化のスピードアップにつなげる。


【2011年8月8日 日刊工業新聞社】