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農商工連携の今(85)畜産分野にIT利活用

 ワコムアイティ(松江市、今岡克己社長、0852-20-7200)は、1993年にペンタブレット大手のワコムの子会社として発足した。主力の業務システムの開発に加え、農業・畜産業向けのシステム開発や医療機関向けサービスなど多角化に取り組んでいる。08年にはあおぞら農業協同組合(鹿児島県志布志市)などとの畜産業IT利活用普及事業が農商工連携に認定された。

 認定事業は牛にセンサーを取り付け、分娩や発情の兆候を検知し携帯電話にメール発信するシステム。大半の畜産農家は高齢化しており、牛を見守るのが難しくなっている。とはいえ目を離せば、死産など事故が発生する。また発情を検知して的確に繁殖できれば、生産性の向上につながる。

 装置は本体とメーンユニット、専用のベルトだけ。本体に加速度センサーを内蔵し、牛の行動をデータ化する。発情した牛はマウンティングと呼ばれる行動を、分娩直前には独特の回転行動をとる。そのデータとカメラの映像を照合すると、ほぼ間違いなく検知できるという。センサーだけでなく「ベルトには苦労した」(今岡社長)。相手が生き物だけにベルトがずれたり抜け落ちたりしないよう素材を吟味し取り付け場所も工夫した。

 09年4月に「喜多佳(きたか)」の名称で発売した。すでに商品化していた養牛カメラとセット販売を基本に据えている。「センサーは感度を高めると誤報率も高まるので、カメラで確認すると確率が上がる」(同)からだ。もちろん別々でも販売する。今のところカメラ単独での需要が多く、センサーは公的機関などが中心。長靴をはいて牛舎に出入りする同社の社員たちを、畜産農家の人たちは“カメラ屋さん”と呼ぶという。

 JA鹿児島県経済連は直営農場にカメラとセンサーをセットで導入することを決めた。2011年度は90セット、来年度は110セットという具合に段階的に導入する。全国でも先進的な団体として知られるJA鹿児島が導入することで、弾みがつくと期待している。

 専務時代から農業・畜産など新規事業の開拓を担当してきた今岡社長は農業分野にITを持ち込むことの難しさを痛感している。「作業者が高齢化しており説明が難しく資金的な余裕もない。しかしIT化が遅れているということは、それだけチャンスもある」。幸いこの分野では長い蓄積と実績がある。そこで「農業・畜産業者とIT事業者、機器メーカーなどが集まり、緩やかな組織体ができれば」と構想している。


【2011年8月1日 日刊工業新聞社】