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リニア中央新幹線、長野県内中間駅の公表迫る−不安よりも「期待感」

 JR東海が2027年の開業を目指す「リニア中央新幹線」の長野県内中間駅案の公表について、地元関係者が駅設置に期待を高めている。東京―名古屋の間の中間駅は通過各県に1駅が設置されるが、JR東海は南アルプスをトンネルで越える直線コースを決定しており、中間駅案が飯田市周辺になるのはほぼ確実な状況だ。週内ともみられる設置駅案公表を控える地元の動きを追った。(諏訪支局長・藤野吉弘)

 6月7日に公表された通過ルートのうち、山梨県については甲府盆地南部で甲府市、甲斐市、中央市、昭和町が対象自治体。一方、長野県については「別途公表」とされた。リニア中央新幹線が通過すると予想される飯田市や高森町など地域の自治体などでは日増しに地元への駅設置の期待が高まる。

 飯田市は6月時点での人口が県内で4番目の約10万4000人。食品関係のほか、多摩川精機やシチズン平和時計に代表される電機、精密関連産業が盛んで、09年の製造品出荷額は飯田・下伊那地区で約3070億円ある。しかし、現在、同市から東京都心への所要時間は高速バスなどを使って約4時間。リニア中央新幹線が開通すれば、都心まで1時間以内、中部国際空港には約70分で到着できる。

 同市が09年11月に実施したアンケートでは市内182社の約85%がリニア開業に関して、不安より「期待感の方が大きい」と回答した。「経費節減効果や県内外で取引が増加する」とみていることが大きな理由だ。同市では中間駅の設置場所について現在のJR飯田駅併設を一貫して要望しており、酒井郁雄飯田市企画部リニア推進対策室長は「リニア駅設置は地元の悲願。現在ある社会インフラが活用できる。南信州全体に良い影響が出るということを研究してきた」と主張する。高速道路との直結、交通インフラとの連携が最重要だとの意見もある。飯田商工会議所の尾沢敏秀専務理事は「国と県、JR東海、地元が冷静に話し合い、街づくりを進めていかなければならない」とし、「伊那谷地域の経済団体が集まって、新しい街づくりの提言を行っていきたい」と話す。

 また、飯田市に隣接する高森町の商工会では「場所がどこになろうと影響があるのは間違いない。地元の人々が経済的、精神的に幸せを享受できるような街づくりをしていかなければならない」(事務局)と強調する。周辺地域いずれの自治体や団体も、リニアによって県外との人的交流が活発化し、ビジネス活性化につながるとし、「中間駅は伊那谷地域全体の産業構造を変えるのではないか」(同)という認識を持つ。

 半面、東京、名古屋、大阪という三大都市圏を結び、経済効果を上げるのがリニア中央新幹線の大きな目的。「品川と名古屋を最短40分で結ぶので、途中下車は、ほぼ期待できない。中間駅は自治体のシンボル的な存在になるのでは」と話す自治体の関係者もいる。

 さらに、中間駅の建設予定地が決定したとしても駅建設費用、周辺のインフラ整備などの負担が地元自治体にかかる。県や国、JR東海の負担がなければ対応できないレベルだ。350億円といわれる駅建設費に対し、生産誘発額を飯田市は540億円と見込み、一定の地元負担があったとしても効果があると見る。

 産業界をはじめとする地元では「世界との玄関口」となるリニア中央新幹線の中間駅への期待は膨らむばかりだ。


【2011年7月21日 日刊工業新聞社】