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岐阜・柳ケ瀬、ドンキ誘致で街づくり

 岐阜市徹明通の柳ケ瀬商店街のど真ん中に4月22日、「ドン・キホーテ柳ケ瀬店」がオープンした。一般的に大型店は「ノー」のスタンスをとる地元商店街が多いなか、同店は商店街の有志が積極的に誘致に動いた珍しいケース。地元自治体や商店街はドン・キホーテ出店を“起爆剤”に柳ケ瀬をはじめJR線岐阜駅周辺の活性化に乗り出す意向だ。郊外で商業集積が進み、中心市街地の空洞化が言われて久しいが、ドンキ柳ケ瀬店の誘致は中心市街地活性化のモデルケースになるのか。街作りの行方も占う。(編集委員・森谷信雄)

 【商店街が衰退】

 岐阜・柳ケ瀬といえば美川憲一の歌「柳ケ瀬ブルース」で有名。歌に歌われるほど昭和40年代は活気があった街で岐阜の中心商業地だった。人出の多い時には「商店街を横切れないほど」(古川洋治岐阜市商店街振興組合連合会理事長)のにぎわいだったという。

 それが地方の商店街では間々みられるように、郊外に専門店が出来たり、大型ショッピングセンター(SC)が出現したりした影響で商業地の大移動が始まった。商店街の店主の多くは、高齢化が進み、後継者も少ない。そこに少子高齢化という人口動態の変化、JR名古屋駅周辺の発展が追い打ちをかける格好で商店街は衰退していった。

 かつて柳ケ瀬にはファッションビルのパルコ、近鉄百貨店があり、スーパーもダイエーや長崎屋などがあったが、顧客の減少から1店閉まり、また1店閉まりと、最近では唯一の百貨店、高島屋と名鉄メルサファッション館を残すのみになっていた。だが約2年前についに名鉄メルサも閉店。大型店は高島屋のみになっていた。

 「インフラの整備は進められたが、(活性化策など)ソフト面はおろそかになっていたきらいは否定できない」。ある流通のコンサルタントは柳ケ瀬についてこう指摘する。空き店舗対策が進まないまま大型店が空いたままの状態をさらす結果になり、それがまた寂れた印象を醸し出していた。

 【野田氏の後押し】

 なかでも今回、ドンキが入居したメルサの空き店舗については、実はオーナーサイドでは取り壊したい意向もあったという。だが一転、大型店誘致が急浮上した。動いたのは自民党の野田聖子衆院議員だ。

 野田氏は岐阜1区選出で岐阜が地元ということもあり当地に思い入れもある。しかも「ドンキのヘビーユーザーだった」という野田氏はお隣の大垣市で生まれ育ったドンキ創業者で会長の安田隆夫氏とは「家族ぐるみの付き合い」というほどの間柄だ。

 「岐阜にもドンキがあればいいと思っていた」という野田氏の後押しもあり、安田ドンキ会長も動かされた。野田氏が地元との調整役を果たし、尽力したが、ドンキ誘致に積極的だったのはほかならぬ地元の商店街をはじめとする地域住民だった。

 一般的には、大型店が商店街に入ると寂れる商店も当然ながら出てくる。このため、大型店の誘致は総論賛成、各論反対になる場合が多い。とくに、柳ケ瀬はかつての栄光の名残か、商店街は駅を中心に広範囲に及ぶ。利害を一致させる作業は並大抵ではない。だが、今回は地元商店街を一枚岩にした商店街の功労者もいたし、地元住民はドンキ誘致に署名活動を展開し、大歓迎のうちに出店までこぎつけた。

 ドンキ柳ケ瀬店の売り場面積は2646平方メートルと同社としては標準店クラス。食料品、雑貨、衣料、ブランド品など6万点をそろえるドンキの標準的な商品政策だが、上階には100円ショップのダイソーが入店したり、ペットショップが入店したりと、ドンキを核店舗にした商業ビルとしての運営になる。4月22日のオープン時には10時の開店前に600人が並んだというから、期待の高さをうかがわせる滑り出しとなった。

 【商店との利害】

 しかし「地元商業にとってはこれからが正念場」(古川理事長)であることは確か。まず、ドンキの誘致に成功した商店街では「ドンキを核にいくつかの核店舗を作り、若い人にも気軽に足を運んでもらえる街づくりを目指す」(同)といい、二の矢、三の矢を用意していると明かす。

 だが、ドンキは総合的な品ぞろえで地元住民にもプラスになるが、今後呼び込む業態によっては、商店との利害が必ずしも一致しないケースも出てくるとみられる。そのハードルをいかに乗り越えて活性化につなげるかが焦点だ。

 細江茂光岐阜市長も「今後ドンキは、(高齢化で)都市居住者にとって重要な役割を担ってくれる力強い拠点」と称賛しきりだが、名古屋に流出している消費をいかに引き戻すか。また名古屋などから呼び込むかが課題とみる。

 細江市長は高島屋とドンキの中間拠点に公園をつくり、回遊性を高めたり、健康をキーワードにサイクルファンを呼び込み、シャワー室を備えたオープンカフェを設置したりと地域活性化のプランを披露する。通常のスーパーではなく、あえて若年層に人気のディスカウント型店のドンキを誘致した柳ケ瀬の決断。果たして、地元が一枚岩になって地方都市中心部の活性化のモデルケースとして確立できるか。これからが知恵の出しどころだ。


【2011年5月2日 日刊工業新聞社】