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地域資源活用チャンネル

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ご当地グルメに新風/農商工連携が“隠し味”(3)

 【5.愛知・野菜ペースト】

 サイエンス・クリエイト(愛知県豊橋市、後藤圭司社長、0532-44-1111)は、地元の農産物をペースト状などに加工し、食品メーカーに提供する農商工連携事業を進めている。農産物を保存できる食品材料にすることで消費拡大につなげるのが狙いだ。現在、大葉のペーストを用いて13社がパスタやパンなど計23品目を商品化。今後は大根などほかの野菜をペーストや粉末にして事業拡大を目指す。

 同社は地域産業を支援する第三セクター。地域活性化を目指す中、T.M.Lとよはし(愛知県豊橋市)が持つ野菜の低温スチーム加工技術に着目。スチーム加工で野菜をペーストなどの材料に加工することの事業化をT.M.Lや農協、食品メーカーに提案した。

 まず愛知県が全国一の生産量を誇る大葉での事業化を目指した。ただ大葉のペースト化は苦難の連続。T.M.Lが加工していた大根などの根菜物とは違って、葉の植物細胞が壊れやすく、栄養価や香りを保てなかったからだ。そこで温度帯や時間など加工条件を変えながら試行錯誤を繰り返し技術の確立に成功した。

 その上でペーストを他の食品材料と混ぜる割合などを食品メーカーが研究、試作を重ねた。1年間の開発期間を経て、2008年に豊橋市の食品メーカー5社が豆腐やギョーザなどを発売。その後、豊橋だけでなく周辺の豊川市や田原市の食品メーカーも続々と商品を開発した。

 今では23品目で2010年度に売上高2億円を見込むまでになった。さらに3社が菓子や調味料での商品化を目指している。

 【6.奈良・葉野菜】

 大阪の医薬品メーカーのカイゲンは2010年12月に、飲みやすさを特徴とする青汁を発表した。主原料に奈良の伝統野菜「大和まな」の新品種を採用し、製造も田村薬品工業(大阪市中央区)奈良工場で行うことから、“奈良産”商品としてPRした。

 奈良時代から食べられていたとされるアブラナ科の葉野菜「大和まな」。新品種は、県が中核となった産学官連携事業の成果から誕生した。

 奈良先端科学技術大学院大学と奈良県農業総合センター(奈良県橿原市)、ナント種苗(同)が連携し、植物の遺伝子技術を使い効率的な新品種の育種技術を09年に開発した。農業総合センター資源開発チームの浅尾浩史総括研究員は「栄養価を維持しつつ、日持ちし、形状がそろった生育が可能になった」と新品種のメリットを強調する。

 田村薬品がカイゲンに「大和まな」を紹介したのを機に、青汁の原料で採用する話が一気に進んだ。カイゲンの東満寛マーケティング部課長代理は「大和まなは青臭くなく、飲みやすい青汁の開発コンセプトにマッチした。原料となる新品種が奈良の契約農場で安定生産できたことも決め手になった」と振り返る。

 「この5年で、産学官連携による新品種を開発し、農商工連携で具体的な商品につなげた意義は大きい」。一連の大和まなプロジェクトで調整役を務めた、奈良県中小企業支援センター地域結集型共同研究推進室の城家旬室長補佐は強調する。

 「大和まな」の普及にかける多くの関係者の思いが詰まった今回の青汁。カイゲンは、同社の通信販売ルートを通じて初年度1億円を目指す。


【2011年1月1日 日刊工業新聞社】