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産業がわかる/群馬の養蚕業−遺伝子組み換えで新事業

 群馬県は繭の年間生産量が約140トン(2009年)と全国一の養蚕県。ただ、合成繊維の台頭と生産拠点の海外シフトのダブルパンチに見舞われ、05年に650戸あった養蚕農家数が09年には同373戸まで減少した。群馬県は養蚕業の存亡をかけて11月から地元養蚕農家などと共同で、世界初の「遺伝子組み換え(GM)蚕」の事業化に取り組んでいる。

 GM蚕に有用たんぱく質の遺伝子を組み込むことで、繭からそのたんぱく質が大量に得られるのが特徴。茨城県つくば市の農業生物資源研究所が開発したGM蚕を基に、群馬県と群馬県藤岡市に本社を置く免疫生物研究所が実用化用GM蚕を開発した。

 この蚕6000頭を6戸の養蚕農家で構成する「前橋遺伝子組換えカイコ飼育組合」が飼育しており、今月20日には免疫生物研究所に出荷する。繭には免疫生物研究所が製薬工程に使うたんぱく質が含まれている。今後「診断薬のほか、がんやアルツハイマー病治療用の抗体医薬の製造への応用を視野も入れている」(免疫生物研究所)。

 また県は今秋、農林水産省などからの受託研究として、県外の大学と共同でGM蚕開発の新規事業を始めた。1年以上かかる開発期間を大幅に短縮できるGM蚕などの開発を目指す。

 ただ新産業の立ち上げには産みの苦しみを伴う。まず、有用たんぱく質の製造コストを期待通りに削減できるかなどは実際に事業化してみないと分からない。また、医薬用に使う蚕にはクリーンルーム内で抗生物質などを含んだ人工飼料を与え続けるが、そもそも厳格な無菌環境が必要かどうか、「前例がないため、検証を進めないと分からない」(県の担当者)という段階だ。

 明治時代の殖産興業の象徴であった富岡製糸場(富岡市)や群馬県桐生市の織物産業など、繊維産業で栄えた群馬県では、1888年(明21)には養蚕農家が7万4451戸と世帯の半数超を占めた。GM蚕による新産業が軌道に乗れば、製糸業や織物産業なども活性化できる。

【POINT】
1世界初、養蚕農家がGM蚕を飼育
2医薬など有用たんぱく質を生産
3衰退の一途をたどるも、生産高は日本一


【2010年12月14日 日刊工業新聞社】