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農商工連携の今(59)地元産クリで和洋菓子−農家の賛同得て安定調達

 岐阜県南東部の恵那市周辺で、和洋菓子の製造販売事業を展開する恵那川上屋(岐阜県恵那市、鎌田真悟社長、0573‐25‐2470)。地元の銘菓として知られるくりきんとんをはじめ、クリを主役にした菓子を多数そろえている。年間200トンのクリを使う同社では、地元の良質なクリを安定調達するための取り組みを農家と続けている。

 同社は現在、恵那市や中津川市の契約農家69人からクリを仕入れている。皮をむく手間はどれも同じだが、取れる実の部分が多く、加工効率が良い一粒25―33グラムの大粒のものが9割を占める。収穫期になると毎朝採れたてのクリが工場に納入され、収穫後24時間以内に菓子材料に加工される。

 良質なクリを地元で大量に調達できるようになったのは、ここ数年のことだ。15年前までは地元で採れるクリは生産量が少なく品質も不安定だった。地元産にもかかわらず名古屋の卸市場を介さなければ手に入らず、結局、原料の99%を九州や四国、韓国など他産地に頼らざるを得なかった。

 「地元のクリから生まれた銘菓なのに、おかしくないか」。地元での安定調達に向けた活動は、鎌田社長の素朴な疑問から始まった。呼びかけに賛同した農家12人と「超特選栗(くり)部会」を設立。県や農協の協力を得て、土づくりから見直し、樹高を2・5メートルまでにコントロールする超低樹高栽培法による枝切りを実践した。手入れしやすいだけでなく果実への日当たりも良くなり、大粒で糖度の高いクリが従来の約2倍採れるようになった。

 出荷条件も細かく規定した。栽培する品種は11品種に限定。それまで虫食いも良品に混じって市場に出荷されていたが、部会では農家が徹底的に良品を選別するよう決めた。また収穫から出荷までの時間を定め、鮮度も保証するようにした。こうして採れたクリは同社が一定の価格で全量を買い取り、契約農家が安心して栽培に専念できるようにした。

 同社は04年に農業法人を設立し、クリ畑の開発や果樹の管理代行を行っている。契約農家は年々増え、1年目に10トンだった収穫量は現在約10倍に増えた。地道な取り組みは、新鮮なクリの安定調達を実現しただけでなく、「生産の背景が分かるという安心感を消費者に与え、菓子の販売増につながった」(小石川浩永取締役)という。

 まだ地元産のクリだけで同社の年間需要をまかなうまでには至っていない。だが今後も農家との連携を広げ、“自給率”を上げていく考えだ。


【2010年11月29日 日刊工業新聞社】