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首都圏リポート/東京・新宿区で染色産業再興

 東京都新宿区の落合・中井地域で、地場産業である江戸小紋や江戸更紗(さらさ)、手描友禅といった染色の若い作り手が染色産業の再興に向けた仕掛けの構築に動いている。着物の需要が落ち込み、工房数が激減する中、新製品開発やイベントを通じ、まず若い世代が親しみを持てる存在に育てようと知恵を絞っている。(江上佑美子)

 江戸更紗の生地をアクリルで挟んだペンダントやはし置き、華やかな文様の小銭入れ―。更紗や小紋を手がける二葉(新宿区)が工房に併設している店舗には、手染めの風合いを生かした小物が並ぶ。同社は工房を2年前に改装し、ガラス越しに製作過程を見られるつくりにした。

 目白大学キャンパスと妙正寺川に挟まれた廣瀬染工場(新宿区)では「江戸小紋の“粋”をビジネスシーンに広げたい」と廣瀬雄一氏(32)が意気込む。30代のビジネスマン向けブランド「粋」を発表し、染小紋を使ったiPhone(アイフォーン)ケースやバッグなどを販売する計画を立てている。

 小売りや飲食などのビジターズ産業が盛んな新宿区だが、北西部の落合・中井地域は室町時代から続く染め物の産地だ。明治、大正期には約300軒の染工房があったものの今は10軒以下。着物の需要の落ち込みの影響は深刻だ。

 一方で、明るい話題はある。後継者不足に悩むモノづくりの世界にあって、染色の志願者は少なくない。「自社ホームページ(HP)で募集すると面接希望の問い合わせがかなり来る」と二葉の小林元文社長(44)は語る。もっとも「着物の需要が落ち込んでいる現状では、様子を見ながら1人ずつ採用する」(廣瀬染工場の廣瀬一成社長)。同社には来年、大卒の若者が1人入社する。

 中井駅から西武新宿線で3駅先の西武新宿駅の周辺は、高層ビルやホテルの集積地だ。外国人の宿泊客が妙正寺川や神田川沿いを散歩するケースも多いという。こうした地の利を生かそうと、イベントにも取り組む。

 小林社長ら後継者たちが結成する「落合ほたる」は毎年10月に工房を巡るスタンプラリーを開いている。手描友禅を手がける協美(新宿区)の大沢学代表(42)は「今年の来場者数は1000人以上。年齢層は幅広く、着物で来た人も多かった。10回目の来年はさらに新たな取り組みをしたい」と顔をほころばせる。来年2月には地域と連携して妙正寺川に反物約60反を流し、商店街をのれんで彩るイベント「染の小道」を予定する。

 小林社長は「お客さんとじかに接することで、モチベーションアップや甘さのないモノづくりにつながる。イベントは挑戦する“弾ける場”にしたい」と構想を練る。

 「本当はモノづくりに専念したい。しかし染め物を未来に残すためには、今動かないといけない」(小林社長)。行政からの支援に頼るだけではなく、自発的な仕掛けで「染の王国・新宿」の再興を狙う。


【2010年11月18日 日刊工業新聞社】