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四国リポート/農業にIT駆使“先進地”四国

 政府が包括的経済連携に関する基本方針を閣議決定した。環太平洋連携協定(TPP)参加への判断を先送りし、懸念された貿易自由化による国内農業への打撃はひとまず避けられた格好となった。ただ就農者の確保や高齢化など依然、農家が抱える課題は多い。農商工連携施策も進む今だからこそ見つめ直さなければならない問題もある。“農業先進地”の四国で、ITを活用し効率化を進めた農業運営に取り組む事例を追った。(高松支局長・林武志)

 高知市春野町に、監視カメラなどを駆使し、遠隔地からの生産管理に乗り出している農家がある。野村巧さんが営む「トマトの村」は約3.7ヘクタール内にビニールハウス群が16棟。水耕栽培で、ほぼ年間を通してトマトを育成し、農協を通じて大手百貨店やスーパー、外食チェーン店などに出荷している。

 「まさに“農家”といえるスタイルだった」と野村さんは経験や勘に頼ったこれまでのトマト栽培を振り返る。そこで、高知工科大学や地元のIT企業であるシティネット(高知県南国市)などと共同で“IT活用農業”を今年から本格化させている。

 仕組みはトマトのハウス内に固定式と持ち運び可能なカメラをそれぞれ2台設置し、リアルタイムの栽培状況やデータをパソコンや携帯電話に送り、管理する。モニターを並べた管理室では、分析動画でトマトの育ち方を随時確認できる。園芸農家で映像を使った管理方式を採用しているところは全国的にも珍しい。

 システムの運営面に携わる片岡幸人シティネット取締役は「園芸農家の労働環境が軽減される」と強調。今年1月から始めたデータが1年分集まる来年以降は「2割程度の増収が見込める」(野村さん)と、より効率的な経営が進むとみる。

 カメラは栽培管理以外にも消費者にライブ発信できる。店内に設けた特設のトマト売り場にモニターを置き、テレビ電話で現地から“実況中継”する形で販促活動に取り組み、売り上げ増加に結びつける。高知市内のスーパーで開いた即売イベントでは、室戸海洋深層水を使ったミネラルトマトの魅力やレシピなどについて野村さんが直接伝えた。消費者からも好評だったという。地元の小学校などにもライブ授業を実演し、農業経営について講義した。

 今後はより細かな作業日誌の作成にも着手する計画だ。徹底的な経費削減につながり約20人の農家従業員がそれぞれ「経営者的視点」を持ち合わせるのに、ひと役買う。

 今回の総事業費は約5800万円。農家の費用負担など解決すべき課題もあるが、ITを駆使した農業経営は「農家がサラリーマン的な動きをできる」(片岡取締役)のが最大の利点。後継者不足や休耕地の有効活用、省力化、若年層の農業担い手育成に加えて、外国産農産物との競争激化。農家を取り巻くこうした諸問題を解決するため、ITを活用した「未来型の農業経営」(四国経済産業局地域経済部)が加速する可能性が高まっている。


【2010年11月11日 日刊工業新聞社】