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地域資源活用チャンネル

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産業観光で地域おこし(下)〈東日本編〉好奇心くすぐるユニークな切り口

【京浜運河クルーズ(横浜市、川崎市)】
 京浜工業地帯の京浜運河に隣接する工場群は、いわゆる"工場萌え"のメッカ。特に光を放つ化学プラントや製鉄所などの美しい夜景は、写真集も発行されるほどの人気だ。横浜市で旅客船事業などを手がけるケーエムシーコーポレーション(横浜市西区)では、そのひそかなブームを受け、2008年6月に京浜運河を巡る「工場夜景ジャングル・クルーズ」を始めた。

 メディアに頻繁に取り上げられたこともあり、これまで運航したすべての便が満席。現在も予約は11月末までいっぱいという盛況ぶりだ。運航は毎週土曜、日曜日。クルーズ時間は90分で、定員30人、料金は一人4500円。

 参加者は家族連れや友人同士のほか、一人での参加も多いのが特徴。同社クルーズコーディネーターの山内真由美氏は「陸から見に行くのは意外と難しいが、船だと工場のすぐ近くまで寄れる。また海面に工場の光が映り、幻想的に見えるのも魅力」と人気の理由を分析する。

 09年10月には横浜港の南側にあたる、本牧ふ頭から根岸湾にかけての工場地帯を巡る「工場夜景アドベンチャー・クルーズ」の運航も開始。地元自治体や商工・観光団体などで組織する京浜臨海部産業観光推進協議会の認定事業にもなっている。(横浜・大楽和範)

【町工場見学(東京都大田区)】
 モノづくりのメッカとされる東京都大田区は、約4000社の中小企業が集積する"日本の加工工場"。区内企業はみな独自に世界レベルの技術を持つ。一部の企業(約250社)では条件付きだが、一般の見学者にも開放している。

 その中の1社、小松ばね工業は、髪の毛より細い0・03ミリメートルからミリメートル単位までの精密バネを製造。1本の針金から自動成形機を使い、さまざまな用途や大きさのばねを作り上げる。作業状況にもよるが、事前に申し込みすれば、その様子を直に見学できる。学校や海外の産業団体などから、年間20―30回の見学を受け入れている。

 東京商工会議所大田支部では、こうした中小企業の観光情報を「モノづくりのまち観光マップ」で網羅。約250社の社名や所在地、連絡先を掲載。区役所や都庁などで無料配布しており、同支部のウェブサイトからもダウンロードできる。

 同マップは昨年から約5000部を配布してきたが、「区内の学校や全国の旅行会社から郵送の注文が相次いだ」(東商大田支部)ため在庫は乏しい。そこで今年中に改訂版を発行する予定。区内の羽田空港が10月に国際空港化することもあり、英語版や中国語版の発行も検討している。(南東京・谷森太輔)

【町工場見学(東京都板橋区)】
 東京都板橋区は東京23区内で製造品出荷額等が大田区に次ぐ2位。光学や精密機器、印刷産業が集積するモノづくりの町だ。板橋区では、これらの先端技術を持つ町工場を観光資源として活用しようと、09年度に見学可能な町工場を選定。モノづくりの現場を見学できるよう、必要な経費の一部を予算に計上した。昨年度の見学者は150人。現在、見学可能企業は15社に増え、業種も精密加工やガラス瓶製造、印刷など幅広い。

 精密板金を手がけるスガヌマでは、実際に加工した製品サンプルに触れ、目の前で加工作業を見学、体験できる。古木孝典社長は「見学コースがある大企業と違い、見学者と作業者が近い距離でコミュニケーションがとれる。我々も見学を通して、気づかされることも多い」と話す。極細の超硬工具製造のサイトウ製作所では「特に子どもたちに現場を見てもらい、モノづくりの喜びを知ってもらいたい」(斎藤裕会長)と期待する。

 25日には区民らを対象に工場を訪問し、写真撮影して、川柳をつくるワークショップを開催。作品は11月に開催される区主催の産業見本市で展示する予定だ。(北東京・東和宏)

【現役炭坑探訪(北海道釧路市)】
 「海底力(そこぢから)プロジェクト」。北海道釧路地域で官民が一体となって取り組む観光活性化事業の名称だ。国内で唯一、稼働中の坑内掘り炭鉱が海底にあることから命名した。

 「海底力」は使わなくなった坑道で熟成させた地酒の銘柄でもある。湿原、阿寒湖など恵まれた自然を生かすとともに、釧路ならではの産業を活用した集客にも力を入れている。

 現在、釧路商工会議所、釧路市、釧路観光協会などがコンソーシアムを組織し、10年度まで3カ年の経済産業省補助事業を推進中。「遺産ではなく、現役の産業施設を見てもらう」(会議所の担当者)のを売りに、炭鉱会社による研修の形での概要説明、坑内装備体験、および別会社が運行する石炭輸送専用列車の見学に、魚市場での水揚げ、競り場の見学などを組み込んだツアーを実施した。「参加者の満足度は高い」(市の担当者)という。

 現役施設を訪れるだけに安全管理と仕事のじゃまにならないことが最優先。受け入れ先の負担を軽減するため、コンソーシアムがツアー客、旅行会社などとの間に入って実施時期、定員などを調整している。(札幌支局長・石井教雄)

【ウオーキング大会(愛知県)】
 名古屋商工会議所や愛知県、名古屋市などで構成する「ものづくり文化再発見!ウォーキング大会実行委員会」は、09年にウオーキングをしながら、地域の産業遺産を巡る企画を始めた。健康志向の高まりから、人気のあるウオーキングと産業遺産の観光を組み合わせることで、幅広い層に産業遺産を知ってもらう狙いだ。

 09年は産業技術記念館(名古屋市西区)や、国盛・酒の文化館(愛知県半田市)などを訪れる3コースを企画。いずれも歩く距離は約10キロメートル。現地で専門家が観光地を案内するため、「歩きながら知的好奇心を深めることができる」(坂野元彦名古屋商工会議所産業振興部街づくり振興グループ主任係長)と胸を張る。

 10月は瀬戸焼の産地である愛知県瀬戸市を散策し、11月には開府400年に合わせて名古屋城を訪れる2コースを参加者に歩いてもらう。瀬戸市のイベントに参加したり、武将姿で観光案内したりする「名古屋おもてなし武将隊」が登場するなど、集客力アップに向けたイベントを用意。「今後も切り口を変えて産業観光のすそ野を広げたい」(同)と観光客誘致に意欲を見せている。(名古屋・高橋友基)

【特産品産地巡り(岐阜県)】
 岐阜県は今年度から、県特産品の産地を巡る観光ツアーを催している。東京都心で国内各地の物産品を扱う店舗運営のメイド・イン・ジャパン・プロジェクト(東京都港区)と提携。参加者は同社主催の「ニッポンブランド・マイスター講座」のメンバー約20人。首都圏で活動するバイヤーやメディア関係者が中心だ。「目利きに岐阜のモノを知って、広めてもらうのが趣旨」(県担当者)として、あえて一般参加は募っていない。

 7月末から8月初めに開いた第1回では、飛騨高山の和ろうそくや木工家具の工房などを1泊2日で回った。各工房では特産品の由来や作り方を学び、製作も見学。地元の漆器「飛騨春慶」や陶磁器「渋草焼」の器で料理を楽しんだ後、その工房と直営店を訪ねるという趣向もあり、参加者からは「モノづくりの価値を見いだし、納得できた」と満足の声が上がった。現地で20万円ほどの品物を購入する人もいたという。

 旅程は県関係者の手作りで、旅の費用は参加者負担だ。美濃焼の産地を巡る第2回ツアーも実施。年度内に美濃和紙や関刃物の産地でも実施する計画で、来年度も続ける方針だ。(岐阜・藤井まゆ子)


【2010年9月24日 日刊工業新聞社】