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中部リポート/愛知・尾州の繊維技術−車・電機、航空機関連に活路

 愛知県一宮市一帯の尾州は明治時代から続く毛織物の産地だ。国内の繊維産業の衰退とともに淘汰(とうた)され、2008年秋以降の不況で、産地の企業を取り巻く環境は厳しさを増した。そうした中、繊維技術を衣料品以外の市場に応用し、活路を開こうと奮闘している企業もある。各社が狙うのは自動車や電機、航空機といった先端技術が集積する業界だ。(名古屋・本多由希子)

 自動車用シートの染色を手がける茶久染色(愛知県一宮市)は、08年にカーボンナノチューブ(CNT)を被覆したCNT導電繊維を開発。ある建設資材会社がその繊維を使って融雪マットを作り、販売することになったため、今後の需要拡大が見込めるとして10月には専用工場を稼働する。

 現在、同社が開発しているのが、抵抗値が低く電線の代替品となるCNT導電繊維。実現すれば自動車や電気製品の一段の軽量化が図れる。蜂矢雅明開発部長は「CNT導電繊維ができたのだから、電線の代替繊維も不可能ではない」と笑顔を見せる。

 原料を供給する企業でも追随の動きがある。染料を製造する西澤(同北名古屋市)は、電磁波吸収機能をもつ布用のコーティング材を開発した。カーテン地に10マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の厚さで塗布すると、電磁波吸収効果はギガヘルツ帯でマイナス1―マイナス3デシベル(約10%)。市販の電磁波吸収体の10分の1の厚さで同等の効果が出る。病院などの電磁波対策として、年末にも商品化する。

 松山毛織(同一宮市)が8年前に始めたのは銅やアルミの織物。最近開発した銅の織物は、銅板と同等の電磁波の遮へい効果がありながら軽く柔らかで、生地の向こうが透けて見える。従来品に比べ広域の電磁波に対応できる。

 その秘密は生地の厚さにある。尾州は厚手の生地を得意としており、ねん糸、織り方、整理加工の3技術で、生地の厚さや付与する機能性を変えられる。これらの技術を応用すれば、繊維に導電や電磁波遮へいのほかに、防音効果なども付与できるという。「尾州の技術があれば、繊維で先端産業を支えられるはず」(田中利明松山毛織社長)と胸を張る。 しかし、国内の繊維産業は海外流出による空洞化に歯止めがかからない状況だ。実際に名門と呼ばれた企業の倒産や廃業がここ数年、相次いでいる。環境変化だけでなく「衣料品以外の市場開拓をしてこなかった」(同)との反省もある。「このままでは廃業で人や機械に染みついた技術は失われ、産地が崩壊する」(産地の業者)と危惧する声もある。

 新市場開拓の取り組みは、産地が生き残るための有力な方策になりうる。「繊維業界に対する国の支援が今より手厚くなれば、新たな市場を目指す企業が増える」と語る田中社長。国の支援も期待しつつ、次世代にバトンを託すための産地の挑戦を続ける決意だ。


【2010年9月6日 日刊工業新聞社】