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農商工連携の今(50)ひと味違う甲州ワイン

 山梨県は国内ワイン生産量の約4割を占めている。県内で古くから栽培されている甲州種ブドウを使って作るのが「甲州ワイン」。和食との相性が良く、県内の生産者らは海外での和食ブームを追い風に輸出プロジェクトを立ち上げるなどPR活動も盛んだ。

 大和葡萄酒(山梨県甲州市、萩原保樹社長、0553-44-0433)は、甲州ワインの品質向上と独自性を追求しており、その一環で貝殻のミネラルを含んだ甲州ワインを製品化、6月末から飲食店向けに販売を始めた。同社が進める「ミネラル甲州プロジェクト」の第1弾となる白ワインだ。萩原社長は「ミネラルを多く含んだワインは味に『しん』ができ、複雑さや厚みが増す。香りも豊かで顧客の反応は上々」という。

 石灰土壌で栽培したブドウにはミネラルが多く含まれる。ミネラルを多く含むワインは長期熟成に向く。甲州ワインにミネラルを補うため、萩原社長が着目したのは朝市で捨てられていた貝殻。さらに調べると、山梨名産の煮貝の殻は年間でかなりの量が廃棄されていた。その貝殻を高温で焼成し、粉末化して土壌に散布した。

 「カルシウムなどの含有量を数値化して分析したことが強み」。2008年4月から自社農場で実証データを収集、ブドウ栽培は契約生産者と連携し、自社の醸造技術と融合を図った。また、貝殻の回収や提供は二幸水産(甲府市)が担当した。

 実証データはブドウとブドウをワインに醸造した場合のカルシウム量を調べた。ワインの分析結果では貝殻を1センチメートル以下に細かく砕いて土壌散布した場合、カルシウムがワイン100ミリリットル中に9.6ミリグラム確認できた。貝殻を細かく砕くことや土壌、ブドウの葉への散布が有効であることも分かった。

 販売にあたり、ボトルのデザインやイメージ作りにもこだわった。ミネラルや情熱をプラスし、「日本の新しいワイン」との意味を込め、「+WA(わ)」と名づけた。販売スタートから約2カ月、「飲食店向けはコスト面など対応する戦略が大事だと痛感した」。今後はスパークリングワインや赤ワインにラインアップを広げ、13年度に売上高1600万円を目指す。

 生産コストは廃棄していた貝殻を使用するのでそれほど高くならないという。自社の「ミネラル甲州プロジェクト」を進め、産地としての強みも確立していく。「辛抱強く採用してくれるファームを増やしていきたい」と萩原社長は意気込む。


【2010年8月23日 日刊工業新聞社】