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地域資源活用チャンネル

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農商工連携の今(49)地産地消の介護食品

 中山間地域の農業は、高齢化や人口流出によって、全国的に衰退が顕著になっている。典型的な地域の一つ、広島県北の安芸高田市は現状の打破を目指し、新しいビジネスモデル確立による高付加価値農業の推進を掲げた。

 同市と広島駅弁当(広島市東区)、広島北部農協(JA広島北部)は、第三セクター「安芸高田アグリフーズ」(広島県安芸高田市、中島和雄社長、0826-52-7555)を2005年に設立した。新会社は重労働のうえ、現金収入が少ない農家の活性化と、地域での雇用機会の創出、それに生産者の顔が見える地元産品の活用という"一石三鳥"を狙った。

 まず、広島県立総合技術研究所食品工業センターと連携、特許技術「凍結含浸法」を使った介護用の嚥下(えんげ)食の開発に乗り出した。凍結含浸法は食材の軟化技術。解凍した食材を、5分程度減圧状態に置くと、食材内部に酸素が入り込み柔らかくなる。この酸素反応を制御することで食材形状を保ったままで製造できる。ゴボウ、レンコンなどの根野菜が舌でつぶせる状態になる。

 食品の種類は順調に拡大し、販売ルートは広島駅弁当が業務受託している老人福祉施設を中心に確保した。残る食材については出資者のJA広島北部傘下の法人「援農甲立ファーム」が、安芸高田フーズの要求基準でコメ、野菜、薬草などを減農薬栽培、全量供給するスキームをつくりあげた。

 約3000平方メートルの工場には、最新の食品加工機器がずらりと並ぶ。国内では珍しい精米、炊飯、加工の一貫生産ラインを持つ。パートを含む社員46人のほとんどが地元採用。「現状でコメを年間1400トン、野菜を40トン使っている。地元産の40%近くになる。農家は計画的に生産できるし、製造するわれわれも、生産者がわかるだけに安心、安全な食品として提供できる」(林拓志安芸高田アグリフーズ常務)。

 現在の主力製品は噛まずに食べられる嚥下食と、一般消費者向けの薬膳粥(やくぜんかゆ)「五色粥」。「業務用の嚥下食でスタートしたが、地元の人や消費者に、わが社がここで何をつくっているのか理解してもらうため、一般向け食品にも力を入れている。粥のほかにカープカレーなども追加、"安芸高田ブランド"としてPRしている」(同)。

 同社は農業者が一方的に提供するプロダクトアウトから、市場ニーズを取り入れたマーケットイン農業への転換を橋渡しする役割も担っている。


【2010年8月2日 日刊工業新聞社】