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関西リポート/神戸市蔵元の日本酒PR−海外販路・新分野を開拓

 日本酒は日本独自の酒として、継承すべき日本文化の一つと言える。しかし国内の酒類販売数量に占める割合は約7.5%(2007年)と低く、30%を占めていた70年代に比べると大幅減少だ。蔵元の集積する神戸市の各メーカーは、日本の文化を残す意味でも日本酒アピールに余念がない。(神戸・北田雄一郎)

 沢の鶴(神戸市灘区)は4月、イタリアのミラノで新製品「敏馬(みぬめ)」と「灘生もと(なだきもと)」の発表会を行った。デザイナーの協力を得て容器にもこだわった製品は、現地シェフが手がけたイタリア料理とともに差し出された。西村隆治社長は「出席者からは『白ワインと似ており、料理に良く合う』との声をいただいた」と手ごたえをつかんだ様子。イタリア料理は日本料理と素材を生かす点で似ており、ミラノの試飲会は日本国内のイタリア料理店へのアピールにもつながると考えた。神戸港の清酒輸出量は10年1―3月期で1506キロリットル。09年同期比で21.3%増と海外販路は着実に拡大しつつある。

 菊正宗酒造(神戸市東灘区)は健康食品分野に新たな販路を見いだす。「生もと造り」で活用する乳酸菌を利用して、腸管免疫力の向上や抗アレルギー作用が期待できる乳酸発酵飲料「酒蔵の乳酸菌 米のしずく」を発売した。10年度に3000万円、3年後に1億5000万円の売り上げを目指す。

 「これをきっかけに日本酒の復活につながれば」と、嘉納毅人社長は期待を込める。新分野参入は日本酒の効果をアピールし、もう1度、日本酒を見直してもらいたいとの思いがあった。

 日本酒が低迷したきっかけは「73年のオイルショックだ」と分析するのは嶋津敏幸兵庫県酒造組合連合会常務理事。不況で税収が減ったことで、国は2級を除く1級と特級の税率を上げることを画策。その結果、小売価格が上がり消費者は敬遠するようになり、出荷額が大幅に減少。加えて級別制度は92年に完全撤廃され「消費者の判断基準がなくなり、信頼の低下を招いた」(嶋津常務理事)という。このほかに発泡酒や第3のビールといった安価な酒が、消費者の低価格志向に合致して急速に台頭したこと、日本酒が消費全体の低迷による消費者嗜好(しこう)の変化にうまく対応できていないことも低迷の一因と言える。

 安く売るのではなく「日本酒を飲むという文化を継承しなければならない」と西村社長は訴える。灘五郷酒造組合は7月5日から9日まで、日本酒のチャリティー試飲会として「灘の酒・SUMMERガーデン」を神戸市内で開催する。1セット500円で各蔵元の酒を試飲でき、仕事帰りの会社員や観光客が日本酒を気軽に楽しむ場をつくる。日本酒を見直すきっかけづくりはあらゆるところで進んでいる。


【2010年6月21日 日刊工業新聞社】