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大手商社、国内農業に参入−安定供給へ栽培に関与

 大手商社が国内で農業ビジネスに取り組み始めた。これまで大手商社の国内における農業ビジネスは資材や機器の販売が多かったが、近年は農作物の栽培に関与している。周年安定供給は課題の一つだが、天候などの影響を受ける農業は生産計画が立てにくく、リスクも覚悟しなければならない。国内農業に新風を吹き込めるか、商社の事例を追った。(清水耕一郎)

【計画生産目指す】

 「経験や勘と離れた計画生産ができる農業を実現したい」(双日)。双日は農業生産法人の成田ガイヤ(千葉県成田市)と組み、千葉県匝瑳市で約3500平方メートルの農地を借りて大規模なビニールハウス、いわゆる植物工場を設置。6月からトマト栽培を始め8月ごろから収穫する予定だ。2年目には25トンの出荷を見込んでいる。将来的にイチゴやメロン栽培も手がけ、レストランなどを中心に直販する。

 栽培技術は早稲田大学発ベンチャー企業のメビオールが開発。特殊なフィルムを使い、農作物と養液を隔離して栽培する技術だ。フィルムを用いることで、作物に水分に関するストレスを与える。「これが作物の糖度を上げ、うまみ成分も増え、おいしさもアップする」(同)とか。さらに土壌から隔離しているため、根からの菌の進入も防ぐ。

 双日は日本に埋もれた優れた技術を活用し、不安定な農業生産のマニュアル化を進めている。日本をモデルケースに今後は東南アジアや中東などに展開する考えだ。

 宮城県栗原市でパプリカ栽培を手がけるのは豊田通商。パプリカはもともと輸入比率の高い野菜で、消費者が国産を求めるニーズに対応する形で参入。既存の農家との競合が少ない点も決め手となった。

【工業的要素も】

 栽培環境を調節できる施設栽培では、生産管理や品質管理など工業的な要素も必要になる。同社では「モノづくり商社といわれる当社がこれまで自動車分野で培った事業ノウハウを生かせると考えた」(豊田通商)と自信を見せる。

 2009年から始めた第1期ハウスでは約126トンのパプリカを出荷し、年約8000万円の売り上げを確保した。計画通りに進めることができたという。「評価も上々で反響も大きかった」(同)と国産ニーズの高さと可能性を改めて感じている。

 第2期ハウスの建設も進めている。栽培面積は4万2000平方メートルとパプリカ栽培で日本最大規模の施設だ。「収穫期は夏秋栽培、冬春栽培を組み合わせた周年体制になる」(同)という。6月末にも完成する予定で、目標生産量は約700トン。年約3億5000万円の売り上げを見込んでいる。

【安全・安心を提供】

 農業ビジネスは事業として大きな利益は期待できないものの、安全・安心な野菜の供給、食料自給率の向上など社会貢献度の高い事業。消費者のニーズをとらえ、それに応えることで、ビジネスの可能性は限りなく広がっていく。


【2010年5月3日 日刊工業新聞社】