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農商工連携の今(37)常識覆す「夏ふぐ」ブランド

 「フグは冬に食べるものと洗脳されている」―。福岡市博多区の老舗ふぐ料理店「博多い津み」の主人、宮武尚弘さんはそう指摘する。「夏のフグもおいしいのだが、料理人にも知られていない」(宮武さん)。夏のフグを有効利用すれば漁業の活性化や九州を代表する食材にできる。宮武さんはそんな思いを胸に、福岡市や地元企業と協力して「夏ふぐ」のブランド化に乗り出した。

 フグは九州や山口県で「ふく」とも呼ばれるなじみある食材。厚生労働省が認可する食用フグは22種類もある。夏にとれるフグも多いが、冬の食材との概念を破れずに市場では値が付きにくい。

 宮武さんは夏ふぐの理解を深めようと2007年と08年に「九州のふく勉強会」を開いた。九州各地の日本料理店から約200人が参加するなど注目された。同時に企業とのコラボレーションにも力を入れる。三越伊勢丹ホールディングス傘下で老舗百貨店の岩田屋(福岡市中央区)は「夏ふぐフェア」を開催。サッポロビールも「夏ふくに夏エビス。」と販促キャンペーンを張った。

 ただし「冬と同じに調理していては浸透しない」。宮武さんはフグに付加価値を付けるため加工食品の開発に着手した。マフグをツナ缶のようなフレーク状にし、ニンニク、唐辛子と一緒に油に漬け込んだ。サラダや炒飯、パスタなどとも相性が良く、風味と食欲をかき立てる。

 博多い津みを経営するイーエム(福岡市博多区、宮武宏史社長、092-291-0231)が生産、販売を担当。瓶詰110グラム入り840円。岩田屋の地下食品売り場で発売中だ。今後オリーブオイル使用や使い切り品など商品を拡充する。5年後に8500万円の売り上げを目指す計画だ。「オイル漬けは夏ふぐをブランド化するための起爆剤」との位置づけだ。「夏ふぐが北海道のカニに匹敵する名物になれば、観光の目玉になるし、漁師さんの利益にもつながる」と宮武さん。

 さらに和食の枠を超えた調理法開発にも乗り出した。3月末に中華料理の陳健一氏、イタリア料理の落合務氏という両有名料理人を招いて「2010夏ふくブランド化フェア」を開催。フグの活躍の場を広げる調理法が紹介された。宮武さんはブランド化に乗り出した4年前を笑いながら振り返る。「夏ふくをインターネットで検索すると『夏服』がずらり出てきた。今はフグの話題が並んでいるよ」と確かな手応えを感じている。


【2010年4月26日 日刊工業新聞社】