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農商工連携の今(33)シャンパン製法を取り入れた清酒

 永井酒造(群馬県川場村、永井彰一社長、0278-52-2311)は、年商が2億5000万円だった1995年、12億円を投じて現在の酒造工場を建設した。周囲から理解を得ることが難しかったのは想像に難くない。この酒蔵には最高級の大吟醸酒にも対応できる最新設備を導入。永井則吉専務は「量から質への転換の象徴」と表現する。運搬などの単純作業は機械化を徹底し、かつて匠の領域だった温度管理なども数値制御化した。一方で社員には、泡立ち方や香りなどの五感から、発酵が順調かどうか判断するといった、人間でしかできない仕事に専念させた。

 構想から10年、数百回もの失敗を重ね、08年末に発売した「水芭蕉(みずばしょう)ピュア」は、業界初のシャンパン製法を取り入れた清酒。強い酸味と甘みを調和したシャンパンに対し、発泡清酒は酸味も甘みもほのかだ。そのため、どんな食事にもマッチする。国内のほか、欧米など海外12カ国で販売している。

 発泡清酒はスパークリング酒と同様、瓶内の2次発酵で二酸化炭素を溶け込ませる。前身が醸造試験場だった群馬県立産業技術センターなどの協力を得て、発酵中の糖分や酵母の量を計測し、数年かけて最適な条件を割り出した。瓶から澱(おり)を取り出す作業がどうしてもうまくいかず、本場の仏シャンパーニュ地方まで研修に赴いたほど。

 ついに完成した"米由来シャンパン"だが、永井専務は「やっとスタートに立てた」と話す。地元の川場村酒米生産組合の協力を得て11年に投入予定の減農薬米を使った発泡清酒を皮切りに、高価格帯の製品群を拡充する。無数のうま味が重なり合う日本食。健康志向も手伝って欧米での注目度が高まっており、日本酒を受け入れる素地も広がっている。

 シャンパーニュ地方への研修ではブランドに対する考え方も学んだ。現地の一流ブランドは、原料のブドウから包装、流通までをパッケージにしてブランドを構築している。農家との関係を密にするのはもちろん、梱包や輸送など川下との連携も深め、「地元の川場村を中心にした一大清酒ブランドを築きたい」(永井専務)と意気込む。

 現在の売上高は約6億円と工場建設当時の2倍超となった。従業員は24人で、「商品の付加価値を高め、この人員規模のまま18億円の売り上げを狙う」(同)。実際、欧州で一流ブランドを手がける酒蔵には、中小規模も多いという。


【2010年3月22日 日刊工業新聞社】