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農商工連携の今(31)未出荷柿で加工食品

 奈良県五條市は全国有数の柿産地。同市内に本社を構える石井物産(奈良県五條市、石井光洋社長、0747-34-0518)は、柿の加工品を製造販売する。2005年には「柿専門店の柿けーき」を発売、全国推奨観光土産品や発明協会の発明奨励賞など多数の評価を得ている。

 奈良県では年間約2万9000トンもの柿を収穫するが、そのうち約3000トンは傷などのため出荷できない。石井社長は未出荷柿に価値を与えるため、柿の加工を始めた。同社製品の特徴は、生柿を多く使用していることだ。それまで、ようかんなどの柿加工食品は干し柿から作られていた。「いかにたくさんの柿を消費できるかと考えた」(石井社長)結果、柿果実100%の柿ようかんやお菓子を開発した。

 製品開発は社長自ら行う。柿けーきは奈良県が募集した創作レシピをベースに、土産用としてオリジナルレシピを開発。「パティシエや日清製粉の技術者を呼び寄せて、菓子作りを学んだ」(同)。摘果柿からとったヘタを付けることで、本物の柿に似せた。4月には平城遷都1300年祭の土産需要を見込み「柿まんじゅう」を発売する予定で、急ピッチで準備を進めている。

 柿を用いた食品開発と並行して、無臭柿渋の研究も重ねている。消臭効果の高い柿渋を染料のほか、せっけんや内装材などの原料として供給する考えだ。奈良県農業総合センター(奈良県橿原市)が開発した抽出法で製造した柿渋は、高濃度で無臭。長年の柿加工の経験がある同社とセンター、奈良県農業協同組合が08年から農商工連携を進めている。

 同社でも製品化を推進している。柿酢をベースに、柿渋を入れたクラッシュゼリーやドレッシング、グミなどは、すでに製品化のめどを立てている。柿渋は「食品に使うと口臭予防や血圧を下げるなどの効果が期待できる」(石井社長)という。

 同社は順調に製品群を増やし、現在では年間220トン程度の柿を加工する。目標の500トンを目指し製品開発を進めるが、懸念材料に原料の柿の確保が不安定な点がある。石井社長は「傷あり柿を(トラック販売などの)ブローカーに売ることは、市場に出ている良い柿の価格も押し下げる要因になる」と指摘。傷あり柿など品質の低い柿は、「加工用としてどんどん提供してほしい」と訴える。安定的な柿の確保と製品開発とのバランスを見極めながら、柿の有効利用を推進する。


【2010年3月1日 日刊工業新聞社】