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大阪・京都地域、EV普及−景気回復の切り札に(下)

《京都/観光に組み込む》

 京都府には電気自動車(EV)・プラグインハイブリッド車(PHV)の車両や電池、環境測定機器、電子部品などを生産する企業拠点が多数集積する。京都大学など大学研究機関も、EV・PHVに関する研究を推進中。そうした優位性を生かし、府はEV・PHVの普及加速に積極的だ。経済産業省から「EV・PHVタウン」にも選定されている。

 京都府は産学官で成る「京都府次世代自動車普及推進協議会」を発足済み。2013年度までのEV・PHVの普及方策「京都府EV・PHVタウン推進マスタープラン」を3月をめどにまとめる計画。同プランは13年度までに府内で5000台のEV・PHVの普及を目標に掲げている。充電設備も府内50基の急速充電器と、7000基の100ボルト、200ボルトのコンセント整備を目指している。そのため普及啓発イベント、税金や金利の優遇策、公用車としての率先導入など多様な施策を掲げる。

 また、京都府の地域特性を考慮して四つの特徴的なモデル地域を設定し、各地域性に合わせた施策を実行する。「大都市観光地モデル」「過疎地モデル」「新都市モデル」「北部観光地モデル」のモデル地域を設定。例えば京都市内のような大都市観光地モデルでは公共交通機関とEVやPHVのタクシー、レンタカーの旅行商品をパッケージ化するといった内容を考えている。観光資源が豊富という特色を生かし「観光と連携したEV利用を促進したい」(府文化環境部)と差別化戦略を話す。

 京都市も京都府の計画と連動しながら、EV、PHVの普及促進に向け充電設備の整備、市民への普及イベントなどに取り組んでいる。09年10月には市民とEVをカーシェアリングして、EVを体験してもらう取り組みを開始。市が所有するEV2台を、2月末まで土日祝日に1日単位で無料で貸し出している。利用者に好評で、毎月400―500人の応募があるという。

 担当者は「走行中静かで加速感も良いなど市民反応は上々」(京都市環境政策局)と手応えを感じている。ただ、今のところEVは価格が高く、走行距離に限界がある。そのため「EVはカーシェアリングという形の利用拡大に適している。この取り組みを通じてカーシェアリングというライフスタイルになじんでもらいたい」(同)と話す。

 観光客がマイカーを駐車して公共交通機関で移動する際、駐車場から駅までEVで送る「EV・パーク&ライド」も、09年11月に計5日間実施した。日新電機の本社駐車場と三菱自動車工業パワートレイン製作所の駐車場を利用。EV充電は日新電機が開発した急速充電器を用いた。EVは計5台で、観光客を約2キロメートル離れた地下鉄太秦天神川駅と京福電鉄嵐電天神川駅へ送迎した。

 京都府は地域性を生かした普及策を促進するとともに、EVを導入しやすいライフスタイルを提案するなど、EVが市民生活に根付きやすい方法の模索を続ける。

【インタビュー/大阪府副知事(新エネ担当)・木村槇作氏に聞く】

―なぜ今、大阪でEVなのですか。

 「大阪のポテンシャルが生かせる。その上、リチウムイオン電池の蓄電池に関して市場拡大が予測されているなどこれからが普及期。半導体や自動車産業が冷え込む中、EVをコアにした産業振興を図り、大阪産業を活性化させていきたい。2009年は大阪EVアクション協議会を立ち上げたほか、大阪EVアクションプログラムを作成した」

―関西でEVの普及促進を図る方策は。

 「大阪EVアクション協議会設立、大阪EVアクションプログラムの策定に加え、国のモデル事業で2億5000万円を獲得した。府内をEVが走れるよう急速充電器の設置を進めたり、2月には国内で初めての携帯電話による予約照会システムの実証実験を始める。この動きを府外でも進めていく。09年7月に開いた大阪・京都・兵庫の3府県知事会議で、急速充電設備を連携して設置することも決まった。大阪での実証結果を広めていければ」

―地域産業振興へどう結びつけますか。

 「市場拡大にあわせ、モノづくり中小の参入を図っていくことが重要。特に新エネ産業は若い産業なので、生産工程を中心に他産業の技術や中小の基盤技術をほしがっている。マッチングの可能性が高い中小の技術開発を支援し、参入競争が激化している新エネ産業に一刻も早く食い込ませたい。新エネ産業でオンリーワン・ナンバーワン企業を輩出していきたいと考えている」

―大学などの研究機関の役割は。

 「大阪府立大で蓄電池やモーターなどに関する先進的な研究を進めており、こうした研究を中小ベンチャー企業と組み合わせることで大阪ならではのEV開発に取り組んでいきたい。府大の奥野武俊学長も大学改革で理系に特化するため、相当力を入れているようだ」

―電力会社出身の視点でEVを見るとどうでしょうか。

 「電力会社は1キロワットの価値を上げることに注力している。今は原子力発電所が夜間も操業している一方で、電力が消費されない状態。夜間に家庭でEVを充電し、昼間にその電力を部屋の照明などに使う手もある。原子力の有効利用につながり、新たな発電所の建設を抑えることができると考えている」


【2010年1月1日 日刊工業新聞社】