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大阪・京都地域、EV普及−景気回復の切り札に(上)

 景気回復の切り札に―。世界的な電機、電子部品、素材メーカーが集積する大阪、京都地域。同地域で大手メーカーから中小モノづくり企業まで、市場拡大に高い関心を寄せているのが電気自動車(EV)だ。産学官関係者の幅広い夢を乗せて足元の"景況悪化"という嵐をくぐり抜ける活路となるか。期待が高まっている。

《大阪/"なにわ産"開発へ》

 「環境に優しい電気自動車(EV)の市場は間違いなく伸びる」−。大手メーカーから中小まで、市場拡大に期待を寄せているEV。この動きに合わせて大阪府は2009年6月に官民共同のEVアクション協議会を設立した。EVの普及を図りつつ、大阪産EVの開発に乗り出すのが狙いだ。今月からは関連の実証事業も始まる。

 大阪府は09年4月に新エネルギー産業課を商工労働部内に創設。EV普及支援に本格着手した。すでに条例を制定済みの神奈川県や京都府などを追う形で事業をスタートした。同年6月に設立したEVアクション協議会のコアメンバーは関西電力や大阪ガスのエネルギー事業者をはじめ、自動車メーカーの三菱自動車工業、パナソニックやシャープ、三洋電機の電池メーカー、タクシー協会、研究機関など有力企業が勢ぞろい。時流に乗るEVとあってメンバーは現在も拡大中だ。

 7月には経済産業省の「低炭素社会に向けた技術発掘・社会システム実証モデル事業」に採択。9月に企画部会を開き、急速充電器の開発などを話し合った。その後、補正予算見直しにより、いったんペンディングの状態に追い込まれたが、今月から本格的な事業に着手する。

 直近で、エコドライブシステムと充電装置予約照会システムの2種の事業を展開予定。エコドライブシステムはオリックス自動車と開発し、1月中に運用を始める。エコドライブは通信機能や全地球測位システム(GPS)機能を備えた装置を車両に搭載し、走行距離や燃料消費、二酸化炭素(CO2)排出量などの走行データを取得できる仕組み。予約照会システムは携帯電話で府内に設置している急速充電器や200ボルト充電器の利用状況を確認できるもので、日本ユニシス(東京都江東区)と共同で2月に始める。府県を越えた広域連携の道も見えてきた。急速充電器をすでに配備している関西の他府県(京都府など)での予約照会システム利用も視野に入れている。「滋賀県ではびわ湖の周りをEVで走るという構想があるようだ」(大阪府新エネ産業課)と夢は膨らむ。

 大阪には大手家電メーカーや素材メーカー、薬品メーカーのほか、加工や塗装など独自の技術を売りにする中小・零細企業が多数集積する。しかし景気減速や東京への本社機能移転により、企業数はもとより自治体運営に不可欠な法人税収入が落ち込み、雇用の悪化も深刻化している。これらの要因が府の商工施策を新エネルギー分野、とりわけEVにシフトさせた。EVアクションプラグラムのほか、環境機器に的を絞ったマッチング支援策を用意。シャープや大阪ガス、大和ハウス工業などの大手企業と府内中小との商談会を定期的に開催している。

 加えて、新エネを手がける企業を大阪湾沖の人工島「夢洲<ゆめしま>(大阪市此花区」へ誘致する動きも足元で活発化。現在進行形で大阪市、在阪経済団体と連携を取りつつ進めている。

 中小企業も新エネルギー分野に前向きだ。自動車向けバニティーミラーを製造するクヌギザ(大阪市生野区)は「EVは成長産業。期待している中小も多いはず」と話す。漏電遮断機を手がける旭東電気(大阪市旭区)は、電気を使う製品だけに自社製品の強みを発揮できると判断。新製品を近く投入予定で、「企業体力を高めて新エネ分野でもシェアを伸ばしたい」と意気込む。

 研究機関の動きも見逃せない。協議会に参加する大阪府立大学はリチウムイオン電池やバッテリーに関する研究で実績を上げている。レーザーを電解質に当てることでリチウム電池の電解液を固体に置き換えた次世代型全固体電池の開発を進める研究室もある。府立大大学院工学研究科の辰巳砂(たつみさご)昌弘教授は「自動車がハイブリッド車(HV)やEVに置き換わった時に、安全性が非常に重要になる」と研究の意義を語る。

 EVを普及させるには、モノづくり企業や研究機関以外の企業の協力も重要。協議会に参加する関西電力や田辺三菱製薬は営業車でEVの導入を進めている。同社は他県のEV普及事業にも参加しており、そこで得た知識や経験を大阪で反映。関西電力は電気事業者として、さまざまな見地からアドバイスを行う。

 富士経済大阪マーケティング本部の鷹羽毅プロジェクトプランニングマネージャーは、「EVの完成型はまだできあがっていない」と現状を分析する。走行性能や価格、リサイクルなど現時点で数々の課題が残るリチウム電池には、「大阪が強みとする半導体技術などで工夫をして性能を向上できる」と予想する。


【2010年1月1日 日刊工業新聞社】