HOME > 事業を広げる > 地域資源活用チャンネル

地域資源活用チャンネル

ニュース

首都圏リポート/日光総業、「日光きのこ園」事業継続

 日光市の企業が倒産企業の事業再生に取り組んでいる。日光総業(栃木県日光市、宇井肇社長)は足利銀行の破たんの余波を受けて倒産した「日光きのこ園」を買収し、日光まいたけの生産を継続させた。独特の栽培法で天然に近い味を実現した日光まいたけ。8月から日光総業のもと、再び動き始めた。(栃木・杉浦武士)

【天然品に劣らず】
 日光東照宮を西に約7キロメートル。日光市細尾町に日光まいたけの製造工場がある。まいたけの「接種―培養―育成―出荷」を手がけ、1日平均50キログラムを出荷する。自然に近い環境をつくるため、温度・湿度・空気・光を徹底的に管理。生育時に太陽光をたっぷりと吸収させると茎が太く、弾力性、香りなど天然品に近い味に仕上がる。現在は1キログラム2100円で販売している。
 「10年間でノウハウを習得できれば早い方」と説明するのは沼尾金一主任技術士。沼尾主任は80年に日本で初めて、まいたけの栽培に成功した。当時、栃木県庁の職員だった沼尾主任は「小学生からの趣味」というまいたけの研究に10年間を費やして独立し、「日光きのこ園」を創業。以来、30年間にわたり県内の旅館・ホテルに納めてきた。

【高価格あだに】
 だが、順調だった同社を足利銀行の経営破たんが襲う。03年に同行が一時国有化され、融資先の鬼怒川、那須塩原などの旅館やホテルも産業再生機構の管理下に置かれた。事業再生の過程でコスト管理が厳格になり、食材の調達方法も低価格品の大量一括化へ。高価格の日光まいたけは見直しの対象となった。
 業務用が約80%だった同社は収入が激減。大手企業との低価格競争、不況による消費者の低価格志向も相まって、1キログラム3000円の日光まいたけの価格は半分以下に下落した。「ここまで落ちると経営が成り立たない」と沼尾主任は08年8月に会社をたたんだ。
 そんな日光まいたけを救ったのが日光総業だった。同社は「明治の館」など老舗レストランを経営し、日光きのこ園とは20年以上の取引があった。まいたけをスープなどに活用し、「市販品と違って肉厚が厚く、味が凝縮している。このまいたけがなくなるのは大きな損失」(宇井社長)と、事業再生に着手。沼尾主任も「信頼できる相手と一緒になるなら」と再生を決意した。
 09年5月、日光総業が日光きのこ園を引き継ぎ、8月から日光まいたけの栽培を再開。沼尾主任は「再びまいたけの栽培ができ、こんなに幸せなことはない。今以上に良いまいたけを栽培し、恩返ししたい」と話す。

【百貨店で完売】
 現在、同社の直営店で料理の具材に使うほか、インターネットで販売している。百貨店などからも引き合いが来ており、横浜市港北区の東急百貨店で開いた限定150個の販売イベントでは2日間で完売。和智士朗日光総業総支配人は「予想外の反響だった。全国に広く販売して、日光まいたけのブランドを広げていきたい」と意気込んでいる。
 年度末にかけて企業の倒産増加が懸念されている。帝国データバンクによると、今年1月から11月まで1万2285件の企業が倒産。不況のためとはいえ、多くの企業のノウハウが失われており、宇井社長は「不況を理由に、せっかくの財産をなくしてはいけない」と強調する。


【2009年12月12日 日刊工業新聞社】