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未来を築く地域発イノベーション/総論−地域競争時代に突入

 地方主権を掲げる政権の発足で、地方の独立性が高まる可能性が出てきた。これまで以上に、地域主体の産業政策が問われることになる。国、地方自治体、地元企業の三位一体の取り組みが地域再生に向けた必要条件となり、それぞれの工夫により新たな地域間格差が生まれるのも避けられない。地方主権は地域にチャンスとなるのか。「地域競争時代」の入り口に差し掛かった今、未来型市場の創出を模索する地域発イノベーションを追う。

【総論】

 地方主権が地域にとってのチャンスとなる体制は整いつつある。地方への回帰をねらった人材が着実に増えつつあることや、地方の起業家への投資を考える人材の多さが証明している。

 2012年にふるさと回帰者は400万世帯―。国土交通省とふるさと回帰総合政策研究所(ふるさと総研)の調査によると、今後4年間で国民の1割、400万世帯が地方へ移住・定住したり、都市と地方の間で二地域居住するなど「ふるさと回帰」する。そこにふるさと回帰産業が生まれ、市場規模は8兆円になると予測している。

 ふるさと総研による10万人アンケートでは、「地方の起業家へすでに投資している」が1%、「地方の起業家に対して、しっかりした投資環境が整備されれば投資してみたい」と32%が回答している。

 働き口がない、と都心に向かっていた若年層・中年層の関心が、再び地方へ向かいつつある。高齢化が進み、労働力が細っていた地方にとってはまたとない機会が訪れる。ただ問題となるのは、やはり仕事。雇用の場をうまく生み出せなければ、ふるさと回帰への意欲が削がれるばかりでなく、地方の活性化の機会を失ってしまう可能性がある。

 地域が主体となって青写真を描ける時代への突入が、さらなる地域間格差を生むことも予想される。「伸びるところは伸びる。リーダー不在で置いていかれる地域も生まれてくるのでは」。政府関係者には、地方への比重が高まることによる影響を危惧する声もある。

 財源や人、資源が制限される中、地域が主体となって魅力を高め、新たな産業をつくりだすために、どんな取り組みができるのか。有効求人倍率が落ち込む中、新たな雇用創出を狙って起業家向けの講座を5年ぶりに再開するいわて起業家大学。日本発のオープンソフトウエア「Ruby」を生み出したまつもとひろゆき氏出身の島根県は、Rubyを地域に根づかせるためにあらゆる支援策に取り組む。経済産業省と農林水産省がイノベーション創出のツールとして普及を進める植物工場も、各地で事業化例が出てきている。地域はただ、手をこまねいているだけではない。

 黙っていればお金が降ってくる時代が終わったからこそ、地域の力量が試されることになる。地域競争時代への突入は、地域経済が浮揚するか、沈んでいくかの分岐点をも意味する。各地が試行錯誤する取り組みを追う中で、地域にとって最適な「解」を探っていく。

【インタビュー/イドム社長・小出宗昭氏】

 静岡県富士市の富士市産業支援センター「f―Biz」の運営を受託し、地場企業の新規産業を育てる傍ら、国の事業評価委員も務めるイドム(静岡市葵区)の小出宗昭社長に、今後の地域・中小企業の支援のありかたについて聞いた。(山下裕子)

 ―新政権誕生で、地域や中小企業支援のあり方はどう変わりますか。

 「国の制度や補助金などの事業評価委員会にかかわる中で、実績を出すために支援を必要としない企業にも支援を進めるなど、政治とのしがらみの弊害があった。本来あるべき姿に一度リセットされるのではないか」

 「地域の支援機関は、主体性がないまま国が決めた支援策を形だけ導入する従来のやり方を改めなくてはいけない。もともと施策メニューから取捨選択し、地域の実態に合わせて使う自由度があったはずだが、できていなかった」

 ―「f―Biz」には月間120―130件の相談があります。相談にくる中小の傾向は。

 「世間は100年に一度の不況と騒いでいるが、あまり実感できない。というのも相談者は、新分野に挑戦しようとする人ばかりだからだ。我々ができるのは、相談企業の潜在力を引き出し、飛躍してもらうお手伝いだ」

 ―潜在力を引き出すことこそ難しいのでは。

 「多くの支援機関は企業の問題点を探るところから入るが、中小の経営者は問題点は分かりきって相談している。我々のチームは『何か光るものがある』ことを前提に支援にあたる。その姿勢があれば力は引き出せる。経営者は自社の強みを積極的には語らないが、よく聞くと話している。会社案内にも書いている。深掘りしていけば、どれだけ光っているか分かるはず」

 ―多くの中小企業向け支援窓口が利用されつくされていない点を指摘されています。

 「名医のところに行けば、安心して治療を受けられる。評判を聞いて、新たな患者が訪れる。利用されていない機関は、そこで相談しようというような動機付けになっていない。求める支援を受けられると納得できれば、中小企業は行動をおこすはずだ」

 ―今後、国、地域、中小企業のあるべき姿は。

 「国がこれまで実施してきた諸施策は大きくは外れていない。むしろ、問題は運営側にある。支援機関は個別の事情があるという理由のもと、明確な目標もないまま走ってきた。国が支援機関のあるべき姿を示し、それに向かっていくような基準をつくるべきだ」


【2009年10月7日 日刊工業新聞社】