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農商工連携の今(13)栽培トマトでジャム−自社製品で利益率改善

 丹波栗やマツタケ、京野菜の産地として知られる京都府亀岡市。ここにマナ(大阪府高槻市、井伊修一社長、072-677-3939)の子会社が運営する野菜農園がある。工場から小川を挟んだ野原に広がる、約330平方メートルの真新しいビニールハウス。中で実るのはイタリア原産の小粒のトマト「シシリアンルージュ」だ。

 今年5月に苗を植え、初めての収穫シーズン。「日照時間が少なく作柄が気になっていたが、豊作でホッとしています」と、井伊社長は目を細める。果肉が多くグルタミン酸が豊富で加熱処理に適した品種特性を生かし、ジャムなどに加工して秋から販売する。

 ドレッシングやソースなど液状調味料の製造を行うマナが農業に取り組み始めたのは、40%程度と低迷する国内の食料自給率への危機感から。「長年の食品加工のノウハウを生かして日本の食に貢献できることはないか」と試行錯誤した末に、たどりついたのが自社栽培した農産物の加工品販売だった。自社産の農作物を作って加工販売することで先行きの見えない日本の農業振興に貢献できると考え、農園運営の別会社、マナファーム(高槻市)を設立した。

 もちろん、経営者としての冷静な計算もある。「特徴のある品種を加工することで利益率の高い自社製品を持てる」(井伊社長)との考えから、栽培作物に単価が高いシシリアンルージュを選んだ。第1弾商品として、濃厚な味わいのトマトジャムを今秋に高級スーパーなどで発売する。大手食品メーカー向けのOEM(相手先ブランド)商品が主力の同社にとって、利益率を改善するかぎともなる。

 「格好良いことを言っても、適正収入が得られなければ働く人はいない」(井伊社長)と、シビアな現実を見据え、若者が農業の世界に飛び込めるような仕組み作りにも取り組んでいる。生産が軌道に乗れば、農園で働く従業員を募集する予定。安定した価格で農作物を買い上げることができるため、一般企業で働く同年代の会社員と同等の給料を払えるという。自社で栽培から加工販売まで一括して行う、食品会社の強みだ。就農体験の一環として現場研修中の京都府立農業大学校の田中景太さんは「将来はここで働きたい」と目を輝かせる。

 栽培から加工の"垂直統合"を確立できれば、旧態依然とした日本の農業ビジネスに一石を投じられると、マナの静かな取り組みは続く。


【2009年8月31日 日刊工業新聞社】