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農商工連携の今(10)「しらす」安全でおいしく−乳業の殺菌工程生かす

 2008年9月、牛乳屋さんの作ったしらす干しの試験販売が愛知県で始まった。ミスマッチにも思えるこの商品の名は「しらす革命」。食品業界の中で最も厳しい衛生管理基準を持つと言われる乳業メーカーが、しらすの加工にそのノウハウを生かしたものだ。

 一般のしらす干しは製造から3日で生臭さやぬめりが出がち。しらすの細菌が増殖し、たんぱく質分解が進むためだ。それを抑えるため、従来は低温での長時間煮沸か、濃い塩分濃度を保持して菌の増殖を抑える方法が主流だった。しかし、長時間煮沸はしらすのうまみも逃してしまうなど、新鮮さとおいしさの両立は難しかった。

 だが、このしらす革命の賞味期限は10日前後。従来の約3倍の期間、保存が可能だ。そのカギを握るのが乳業メーカーの中部乳業(愛知県岡崎市)が開発した殺菌工程。高温の過熱水蒸気で短時間のうちに中心部まで一気に殺菌。その後急激に冷却し、しらすの風味を逃さないのが特徴。

 水産物業界にとっては斬新なこの加工方法。しらす干しづくりで、過剰な添加物や塩分を用いず、安全性と素材のおいしさを両立できる方法として注目を集めそうだ。

 全国第2位のしらすの産地である愛知県日間賀島(南知多町)で漁師を営む高橋久二さんが捕ったしらすを、中部乳業が殺菌、パックに詰める。そして、水産物卸の武儀商事(名古屋市瑞穂区)がスーパーに販売する仕組み。食の安全を求める消費者の声を受け、水産物加工品には珍しい、トレーサビリティー(履歴管理)も構築している。

 連携のきっかけは8年前。武儀商事からの依頼で、中部乳業が水産物の加工を手がけたことが2社を結びつけた。その後2社で協力し、傷みにくくおいしいしらす干しを作ろうと決意。高橋さんを誘い、しらすの捕獲からスーパーに販売するまでの一貫体制が整った。

 昨年の試験販売は9月からだったため本格的な販売は今年からだ。しかし、今年は春先の漁が不振で7月にようやく販売にこぎ着けた。「自然が相手だけに、思うようにいかないことも多い。じっくり腰を据えて取り組む姿勢が大切」(武儀山社長)と説く。

 中部圏のスーパーで販売するほか学校給食への採用も予定している。「自分が島で食べている海の恵みを全国の人にも届けたい」という高橋さんの願いから、ネット販売も始めた。今後はこの殺菌工程の他の水産物への応用も模索していく。


【2009年7月27日 日刊工業新聞社】