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首都圏リポート/茨城・ひたちなか市に「ほしいも学校」−農工商連携でブランド向上

 茨城県ひたちなか市で、特産品の干しイモを使った地域活性化の取り組みが始まった。地元企業3社が有限責任事業組合(LLP)「ほしいも学校」を設立。干しイモの歴史や文化をまとめた書籍の出版のほか、新商品の開発、干しイモ作りの体験学習などを行っていく。グラフィックデザイナーの佐藤卓氏を推進役に、商工会議所や大学も参加し、干しイモのブランド価値の向上と、若い世代へ継承していくことを目指す。(茨城・戸村智幸)

 茨城県の2007年の干しイモ産出額は69億円で、全国の98%を占める。中でもひたちなか市は県全体の7割以上を占める最大の産地だ。産出額はここ数年増えているものの、農家の高齢化が進み、生産者の減少や後継者不足が懸念されている。

 そうした中、干しイモを加工、販売する幸田商店(ひたちなか市)、農業生産法人の照沼勝一商店(東海村)、木内酒造(那珂市)の3社と、ひたちなか商工会議所は、農商工連携などで干しイモの活用や消費拡大に取り組んできた。そして今年5月に「ほしいも学校」を設立した。

 このほど、ひたちなかテクノセンター(ひたちなか市)で関係者約140人を集めたシンポジウムを開いた。講演した佐藤氏は、干しイモに関連するあらゆる要素を「解剖」することを提言。歴史や文化の現状、「解剖」による干しイモの分析、"ねちゃっ"とした食感など干しイモの特徴を10月をめどにまとめ、年明けに出版を予定する。常磐大学(水戸市)国際学部の北根精美准教授のゼミの学生や3社の若手など約10人が調査に参加し、佐藤氏の事務所が編集する。

 LLP代表を務める幸田商店の鬼沢宏幸社長は「地域に100年続いてきたものをあらためて見直して、身近な環境を守っていくことの重要性を再認識する機会にしたい」と話す。3社で新商品の開発に取り組み、「ほしいも学校」のブランド名で売り込む計画だ。

 また、生産者のすそ野を広げるため、小・中学生を対象に、干しイモ作りの体験学習を来年から行う。干しイモを作るだけでなく、地域とどのようなつながりがあるのかを子供たちに伝え、地域への関心を持たせる。

 佐藤氏が最初に干しイモにかかわったのは、3年前に水戸芸術館で開かれた「日常のデザイン」展だ。地域の特産物を使った出展物として、老舗菓子会社の亀印製菓(水戸市)と、干しイモとホワイト・チョコレートのコラボレート商品を共同開発した。

 その後、木内酒造が商品のパッケージデザインを佐藤氏に依頼したことをきっかけに、3社が佐藤氏に干しイモのプロデュースを依頼。干しイモに関心を抱いていた佐藤氏は推進役を買って出た。佐藤氏は「日本の食のためにデザインで何かをしたい。調査などあらゆることに積極的にかかわっていきたい」と意欲を見せる。

 「ほしいも学校」には、特産物を見直すことで今まで気付かなかった地域の魅力を再認識し、ブランド価値を向上させるという攻めの役割と、地域の伝統を若い世代に引き継ぐという守りの役割がある。地域活性化の成功例となるために「ほしいも学校」には、この二つの役割が期待される。


【2009年7月3日 日刊工業新聞社】