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農商工連携の今(3)魚のプロがワインづくり

 富山湾が一望できる山あいにある農園。以前は草木が生い茂っていた耕作放棄地だった。その土地で魚のプロ集団が農業への挑戦を始めた。

 その集団はT-marks(富山県氷見市、釣誠二社長、0766-72-4500)。同社の釣社長は以前、兄の釣吉範氏が社長を務める魚の卸問屋・釣屋魚問屋(氷見市)で飲食事業を担当していた。そこで「飲食店で使う米や野菜を自分たちの手で」と、農業への参入を思いついた。

 早速、1年近くかけて全国20カ所の農場や農家を視察。その結果、米や野菜の栽培のほか、牛、豚の飼育などチャレンジする候補がいくつか見つかった。そんな中、新潟県にあるワイナリーで農園を見た時、「これは面白い」(釣社長)と魅せられ、ぶどうの栽培とワインづくりを決心した。

 だが、この分野はまったくの素人。このため、ワインづくりのきっかけを作ってくれた新潟のワイナリーに依頼し、06年8月から1年間、魚問屋の社員1人を預かってもらった。ぶどうの栽培とワインづくりのノウハウを習得するためだ。一方で、氷見市に相談し、農地選定作業も開始。そして07年7月、農園運営を主体とするT-marksを設立し、ワインづくりの一歩を踏み出した。

 農地は氷見市より賃借した。社員の力で開墾が進み、08年4月にぶどうの木を植林。現在、農園は約7ヘクタールまで広がり、4000本のぶどうをはじめ、洋なしや梅を栽培している。10人近くの社員は、午前中は魚の仕事に従事し、午後からぶどうの栽培に携わっている。

 こうした同社のワインづくりを側面から支えているのが釣屋魚問屋と、同じく魚問屋の日の出大敷(石川県能登町)。両社はぶどうの栽培に必要なユニークな肥料を提供している。その肥料とは売り物にならない小魚や貝などの海産物。この肥料で育てると、「果実の甘みが強くなるはず」(釣社長)と期待する。

 今秋にはこの農園で採れるぶどうを使ってワインを試作する予定。その後は、ワイン工場やレストランの建設にも取り組む考えで、夢は膨らむばかり。そして、自社ブランドワインが商品化できれば、食料品商社のシーフード北陸(富山市)が自社のネットワークを使って全国販売する計画。目指すワインは「氷見の魚など新鮮な魚介類に合うワイン」(釣社長)。

 海の男の新たな挑戦はまだ始まったばかり。夢と期待を背負い、今日も果実づくりにいそしむ。


【2009年5月18日 日刊工業新聞社】