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新潟県加茂市の取り組み−“桐”たんす産地を活性化

 伝統産業の衰退を食い止めようとする動きが新潟県加茂市で始まった。加茂は全国の生産量の約7割を占める桐(きり)たんすの街として知られている。その歴史は200年以上と古く、76年には国から伝統的工芸品の指定を受けている。ただ、近年は婚礼家具の減少などで需要は減る一方。そんな状況を指をくわえて見ているわけにはいかないと、地元では新たな試みが動きだしている。(新潟・阿部正章)

 【デザイナー招く】
加茂商工会議所では、伝統技術を生かした新たな家具づくりを05年から始めた。市場が求めるデザインの桐家具製品開発による新ブランドの確立と、それらの国内外への販路開拓がテーマだ。
外部から著名なデザイナーを招いて、製品開発や販売戦略など、新ブランドを確立するための総合的なプロデュースを依頼。趣旨に賛同する加茂地域のたんす、建具、びょうぶ業者、計7社が参加し、テレビ台やキャビネットなど、25種類41製品を完成させている。
桐は軽くて、湿気にも強く、柔らかな質感といった特徴を持ち、日本では高級品として扱われているが、欧州ではそもそも桐素材を家具として使う発想自体がなく、堅木で作られる丈夫な家具が好まれているという。

 【法人組織設立へ】
当初は「桐製品が海外で売れるわけがないという声もあった」(加茂商工会議所)が、海外展開の足がかりとして、ドイツや中国で行われた展示会に出展。「『素晴らしい製品』と言われた」(同)と評価は上々。現在、スイスの家具店と商談中で09年中にも取引が始まる予定だ。
国内でも会社の応接室用などといった新たな需要が出てきており、海外とともに国内の販路開拓にも力を入れていく。この4年間で「事業の方向性はわかってきた」(同)とし、これまで蓄積してきたノウハウを活用し、ビジネスとして事業を行う法人組織の設立を現在検討中だ。
地域のたんす業者で構成される加茂箪笥(たんす)協同組合でも、海外向けの桐製品ブランド「PAULOWNIA(パウロニア)」を07年に立ち上げた。組合企業7、8社が参加し、3人の若手デザイナーにデザインを依頼、ソファ、サイドテーブルなど伝統の枠を超えた10以上の桐製品を完成させた。08年には加茂市で行われた桐たんすの見本市にイタリアなど海外の業者を招待。感触も良く、「09年度には取引を始めたい」(北沢総一郎理事長)と意気込んでいる。

 【一歩ずつ着実に】
両者に共通するのは、「このまま何もしなければ衰退するだけ」(同)という危機感だ。加茂箪笥協同組合では77年には54社が参加していたが現在では31社にまで減少。また、工業統計調査によると加茂市の家具・装備品製造業の出荷額も91年の99億4505万円から06年は24億5055万円と約4分の1までに落ち込んでいる。
まだ参加する企業は限られているが、これらの取り組みが成果を上げて、活路を切り開いていければ、より多くの企業のかかわりが期待できる。これにより衰退を食い止めるだけではなく、木材業者など周辺を含めた産地全体の活性化にもつながっていく。
製品価格が高いなど普及に向けての課題はあるが、取り組みはスタートしたばかり。「ブランドとして知られるようになるには30年かかる」(たんす店経営者)というように、一歩ずつ着実に、根気強く取り組むことが求められる。


【2009年3月31日 日刊工業新聞社】