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JR九州、熊本―人吉間で来月SL走行−修復を若手に継承

 05年に引退したJR九州の「SLあそBOY」が「SL人吉」として、熊本―人吉間で4月に復活する。復活を求めるファンの声を受け、約4億円をかけて修復。小倉工場(北九州市小倉北区)で試験走行を行った。実際の路線での試験走行も近く始める予定で、微調整を続けながらデビューの日を迎える。修復を担当したある技術者は「運転士に試験走行の感想を聞きたい」と興奮を隠さない。修復を担当した技術者らの努力が実を結ぶ。(西部・田渕奈緒美)

 【復活作業】
 08年11月中旬のある朝。「ちょい南」「ちょい、ちょい」―工場内に大きな声が響いた。微調整しながら、SLの心臓部であるボイラを台枠に載せる作業。ボイラと台枠の左右のすき間はわずか3ミリメートル。技術者全員が互いの声で位置確認しながらの作業で、チームワークが重要な瞬間だ。ボイラと台枠は見事に合体。この日、SL人吉号復活作業は大きなヤマを越えた。

 【OBの声聞く】
 SL修復は「耐久性があり、メンテナンスがしやすい車両に最大限近づける」(小田政俊小倉工場総務課長)ことを目指した。SLはコンピューターや機械でつくれるものではなく「手作業で、技術者の感覚がものをいう」(同)。
 取り換え部品はどこにでもあるものではない。蒸気機関車の車体をボイラ、台枠、車輪に解体して修復した。元の状態に戻すのは一つひとつのすり合わせ作業の積み重ねだった。ボイラと台枠の合体は「うまくいくかどうか、一番緊張した瞬間だった」と、台枠担当技術者の清水利男さんは振り返る。
 SLの修復は文書化されたマニュアルだけではこなせない。これに頭の中のマニュアルが加わり、手探りで完成させる。現在80歳を超える技術者OBにも話を聞き、長年の経験から生まれた独自のマニュアルも修復に生かされた。

 【人づくり推進】
 だが「技術革新も必要」と話すのは、ボイラ担当の玉井明人さん。蒸気ドームの取り付け部分を改造するなど、工夫もあちこちにちりばめた。「若返ったSLが長く元気で走行できるようにするのがわれわれの使命」と技術者らは口をそろえる。
これからの課題は人づくりだ。小倉工場で働く従業員は約600人。だがSL修復に携わる技術者はわずか9人で、45歳以上の技術者がほとんど。期待されるのは入社して10年未満の30代の技術者。一つでも多く技術を習得しようと、先輩技術者の後をついて回る。モノづくりの工程にかかわっていると、トラブルの原因も究明しやすい。「イレギュラーな事態にも対応できる人材に育ってくれれば―」。SLに強い思い入れを持つ先輩技術者たちの願いだ。


【2009年3月3日 日刊工業新聞社】