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JR東、宮城DCをモデルに観光事業推進

JR東日本は現在実施中の地域と連携した観光需要喚起策、仙台・宮城デスティネーションキャンペーン(DC)をモデルと位置付け、観光事業を推進する。自治体などの協力を背景とした小回りのきく旅行は、旅行会社にない発想や仕組みが随所に発揮され、好評を得ている。同社はここでの経験や市場調査結果などを生かし、観光事業の一層の活性化を狙う。(大島直之)

【30年の歴史】
JRグループと地方自治体などが共同で誘客を図るDCは約30年の歴史を持つ。レジャーブームと重なり、キャンペーンとして打ち出すだけで、自然に客が集まった時代もあった。しかし消費者の目が肥えてきたのに加え、旅行会社の増加で競争が激化してきたのを受け、JR東日本は地域との連携を重視し、個性的な旅行を提供する方向にカジを切った。

同社は沿線ネットワークを生かし、それぞれの地域の自治体・経済界と密接な関係を築いている。地元との密着度を観光事業にも活用していこうというのが同社の戦略だ。その一環として、同社観光開発チームのスタッフが自治体の観光関連の職員らと積極的にコミュニケーションをとることにも力を入れ始めた。

10月にスタートした仙台・宮城DCの中で、特に好評なのが観光地と地元の味を堪能する日帰りバスツアー「食べばす号」だ。例えば朝の仙台駅を出発し、漁港で知られる塩釜仲卸市場(塩釜市)で昼食。市場の一室で提供されるのはご飯とみそ汁のみ。各自が市場内で買った鮮魚などの海産物を持ち寄って食べるシステムにした。県外からの客だけでなく、地元仙台からの参加者も絶えないという。

【複数店から選択】
また宮城県南部の白石城(白石市)を訪れるプランでは、地元名産で油を使わず練り込んだ温麺(うーめん)を食べるコースを設定。JR東日本が地元の有名な温麺専門店数店を取りまとめて、各自が好きな店で食べられるようにした。これまでは、地域の店舗とこのような形で連携することは少なかったという。

同社は仙台・宮城DC期間中(10―12月)の送客目標を8万2000人としている。宮城県内の宿泊客数は前年同期比で10%程度減っているが、「送客数はほぼ計画通りに推移している」(JR東日本)。

【自覚促す機会】
この取り組みは乗客増につながるだけでなく、地域の観光事業の活性化にも一役買っている。運営を手がける仙台・宮城DC協議会の相澤滋事務局次長(JR東日本から出向中)は「DCは、あくまで地元が観光施策に目を向けるきっかけ作り」と指摘。「3カ月の期間限定ではあるが、準備、実施の過程が自治体、観光協会などをはじめ、地元全体に観光地としての自覚を促す効果があった」(相澤次長)と見ている。

少子高齢化が進む中、観光関連事業はJR東日本にとって重点テーマの一つ。それだけに、DC展開で蓄積したノウハウは今後、大きな武器となりそうだ。


【2008年12月8日 日刊工業新聞社】