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地域力を高める(中)社会起業家−民間手法で"人"育てる

 地元に帰っても、希望する働き口がない。ヒト、モノ、カネは大都市圏に集中し、未来を担う若者の地域離れが急速に進む。一方で、若者の中には、お世話になった故郷に恩返ししようと地域の課題に積極的にかかわり、生き方の幅を広げようと率先して地域に入る動きもある。行政サービスによらず、民間の手法で地域の課題解決につなげる「社会起業家」が存在感を増す。地域の活性化に若い力は不可欠で、いくつかの取り組みによって、成果が出始めている。

 「都会人の田舎暮らし志向に目をつけた」と話すのは、特定非営利活動法人(NPO法人)「えがおつなげて」(山梨県北杜市)代表理事を務める曽根原久司さん。活動の拠点となる山梨県北杜市須玉町の増富地区はかつて、高齢化によって離農が進んでいた。耕作放棄地をよみがえらせようと曽根原さんが思いついたのが、開墾ボランティアで、年間延べ人数は500人が訪れ、3年間で3ヘクタールを開墾した。伊藤忠商事やオーガニックスーパーの従業員などもCSRや食の安全への意識向上を狙って参加する。

 曽根原さんが今後の課題とするのは「都会と地域をつなぐコーディネーターの育成」という。そこで開墾ボランティアの水平展開を進めるために関東ツーリズム大学の構想を打ち出した。09年春の開校を目指して、耕作放棄地の再生を狙いに、東京都や千葉県など1都10県に整備する。

 「きっかけは自分自身のキャリア感の開放だった」と話すのは、NPO法人ETIC(東京都渋谷区)代表の宮城治男さん。宮城さん自身、大学在学中には就職の人気ランキングを窮屈に感じていた。ランキングに当てはめて考えることは自分の生き方を限定することになる。「仕事は自分でつくりだせる」(宮城さん)と始めたのが起業家育成を支援するETICの活動だ。

 地域と一緒に、地域の新しい仕事づくりをプロデュースする「チャレンジ・コミュニティ・プロジェクト」は、04年の開始から3年間で15を超える地域に活動を広げた。活動の中心は地域へのインターンシップの仲介。生まれ故郷を元気にする目的で、会社を辞め、新たにNPO法人を設立し、運営を務める女性の代表者も生まれた。

 地域にとって若者が入ることで刺激が生まれる。

 若者は自然に揉まれ、地域の伝統やモラルの中で期待されて仕事をする。「地域には人を育てる力がある」と宮城さんは実感を込める。


【2008年9月18日 日刊工業新聞社】