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首都圏リポート/埼玉・川口−3輪バイク製作へ地域中小が集結

 地元企業の技術力を結集し、大型バイクの製造に挑む―。埼玉県川口市で、地元の川口商工会議所と中小企業が一体となって3輪のバイク「トライク」を製作するプロジェクトが動きだした。完成予定は8月。企業集積を生かし、部品や機構の生産にとどまらず、製品作りに乗り出し、川口のモノづくり力を全国に発信する。(さいたま・孝志勇輔)

 【「下請け」の街】

 トライクの製作は、川口商工会議所の「川口中小企業の底力」紹介事業として始まった。川口は鋳物や機械工業を中心に、部品の製造や加工などの下請け企業が多い。このため「最終製品がつくれることをアピールする」(同会議所特別事業推進室)狙いがある。

 3輪バイクのトライクは一般にあまり知られていないが、その分、完成させれば人目を引くと読んだ。プロジェクトには市内の企業など約20社が参加。鋳造や機械加工だけでなく、デザイナーや車両整備士らも加わる。リーダーを務めるのは、自動車用部品などの鋳造を手掛けるツジイインダストリーの辻井健郎社長。辻井社長は「川口にはオートレース場もある。トライクの製造により、川口をバイクの街にできれば」と意気込む。

 【排気量1110cc】

 熟年ライダーを主なターゲットに、迫力のある重厚な「大人のバイク」を製作する。後輪2輪形式になる見通しで、エンジンの排気量は「川口」にちなみ1110cc。安定性のあるトライクを目指す。エンジンや機構部分は中古のバイクや自動車部品などを利用するが、ここで各社の加工技術や強みが発揮されることになる。

 和光技研(荒川晃社長)はフレームやシャフトなどのメッキを担当する。これまで品質基準の厳しいバイクのパーツなどに対応してきた技術力を生かし、さびに強く、深い光沢のあるダブルニッケルクロムメッキで仕上げる。

 トライクのパーツを製作するのはアステック(杉田治美社長)。放電加工を使うことが多い金型の製造に、マシニング加工を取り入れた。独自のノウハウは、ステップなどのパーツ加工にも応用できる。

 【障害者の目線も】

 車両のベースとなる部分は部品を手に入れ、加工技術により仕上げられる。このため「デザインが一番のポイントになる」と辻井社長。デザインの考案は、アイロムスタッフ(加藤親明社長)が中心的な役割を担う。市販のトライクは高級感のあるデザインが多い。また、倒れにくいこともあり、足の不自由な障害者らも乗れる。アイロムスタッフの依田眞吾会長は「ユニバーサルデザインの考え方も取り入れると独自性が出てくる」と提案する。

 プロジェクトでは110ccのトライクを試作しており、8月の「たたら祭り」までに1110ccの完成を目指す。エンジンが大きくなるため、安全性の強化と実用性の両立が課題となる。

 川口の伝統ある鋳物と機械工業を生かしたトライクの製造。多種多様な企業が集積するからこそ、今回の取り組みが可能になった。下請け体質が強い川口の産業イメージを変えることにもなりそうだ。


【2008年4月22日 日刊工業新聞社】