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甲信越リポート/金属加工の街・三条市と燕市、技術者育成で成果

 金属加工業者が集積する新潟県の三条市と燕市で技術者育成の取り組みが成果を表し始めた。三条市では鍛冶技術を学んだ技術者が伊勢神宮(三重県伊勢市)向けの和釘(くぎ)を製作、3月中に出荷を始める。燕市では研磨技術を学んでいる若者がジェット機の主翼部品の磨き仕事を始めた。両地域とも産地を守り、振興するための技術者育成として地域の期待がかかる。(新潟支局長・関広樹)

 【3年計画で】

 伊勢神宮では建物を20年に1度建て替える「式年遷宮」を2013年に控えて、春から工事が始まる。その工事に和釘を供給するのが三条工業会(新潟県三条市)。同工業会は和釘の供給を視野に05年度から3年計画で刃物など金属製品の製造技術者を対象に技術継承事業を始め、07年度は16人が学んでいる。

 三条工業会は技術継承事業を文字通りの技術継承だけでなく地場産業振興のための人づくりとも位置付ける。手作りの和釘製造には金属加工の基礎的要素が詰まっている。今回の技術継承事業では和釘製造に限らず材料や加工技術を広く学んだ。

 三条市では伝統的な鍛冶技術から鍛造やプレスなど、機械加工へと産業のすそ野を広げてきた。今回の技術継承事業は機械やコンピューターが及ばない技術を、金属加工の原点である鍛冶技術を通じて伝えることにも大きな意義がある。三条工業会としても新技術導入や新規事業展開への原動力として基盤技術が生かされることに期待する。

 三条工業会は08年度も技術継承事業を継続する計画だ。「まだまだ地域は振興できる」(兼古耕一三条工業会理事長)と成果に自信を見せる。

 【指導者も一緒に】

 一方、燕市では07年5月にオープンしたバフ(羽布)研磨の人材育成施設「燕市磨き屋一番館」で技術継承が進む。ここでの指導の特徴は同館の運営主体である燕研磨工業協同組合(燕市)が受注した研磨を手掛けながら技術を学ぶところ。指導者は研修生の隣で一緒に研磨を行う。

 「お客さんから預かった大切な仕事」(田中三男燕研磨工業協同組合理事長)だけに、仕上げや検品は研修生にやらせず指導者が行う。最近では比較的簡単なものだと仕上げまで研修生が行うこともある。受注品には機械部品や携帯電話のほか、07年末ごろから小型ジェット機の翼の部品も磨くようになった。

 燕市のバフ研磨業界は個人事業者をはじめ小規模事業者が多い。高齢化が進み、人を雇って後継者を育成することが難しくなっている。しかし小規模事業者の集積こそが量産品から多品種少量など、さまざまな注文への地場の対応力ともなってきた。また個別事業者であっても「1人よりも2人、3人の方が力強い」(同)と、時に応じて力を合わせてきた歴史もある。業界にとって後継者育成は業者の垣根を越えた共通の課題になっている。

 【幅どう広げるか】

 燕市磨き屋一番館で学ぶ研修生は現在7人。3年間学んで卒業する予定だ。研修が始まって11カ月ほどで基本的技術を学んだ。今後は多様な仕事を手掛けて経験を積むことで、技術者としての幅をいかに広げるかが課題となる。


【2008年3月7日 日刊工業新聞社】