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マンパワー/地元に若者残せ−長崎県、奨学金支援で県内就職促進

 「卒業生の9割は県外へ出ていく。地域に貢献できていないのでは」。佐世保工業高等専門学校の井上雅弘校長は言う。県内の若者は首都圏や中部地区へ流れている。長崎労働局によると、07年3月の高校卒で就職した3977人のうち県外は2152人。中でも愛知県が538人と最も多い。地域経済の底上げには人材・頭脳流出に歯止めをかけることが喫緊の課題。その長崎で新たな試みが始まる。

■資格取得を重視
 長崎県は08年度から、県内就職を希望する工業系高校の生徒を対象に、佐世保高専への「推薦編入制度」を始める。編入者らに対する奨学金の返済支援制度も設けた。すでに和歌山県が同様の編入制を実施しているが、奨学金の返済補助まで踏み込んだ事例は「全国初」(長崎県)という。助言や相談による就学・就職支援の枠を超え、経済支援にまでおよぶ新しい取り組みだ。
 推薦編入枠は各学科2人程度で計8人。県内就職を希望する工業系高校の卒業予定者が対象で、成績上位者や国家試験による資格取得実績を重視。08年度の推薦編入試験は7月に実施する。奨学金返済補助は高専在学の最終2年間に受けた奨学金が対象。卒業後、県内企業で3年勤務すると半額(最大で約61万円)受給できる。
 地元企業もこれに呼応。独自の奨学金補助制度を設け、同高専卒業生を採用しようと試みる。これまで造船関連を中心に8社が賛同。県は08年の早い段階で賛同企業を20社まで増やす考えだ。
 「大学で単位だけとってきた学生と違い、高専生は勤勉で技術も持ち合わせている」と評価するのは佐世保市に本社を置く賛同企業の一社。この会社では編入者に限らず、佐世保高専卒業生に対し一定期間就業後、奨学金受給額1年分を支給することを決めた。支援制度を武器に優秀な高専生を確保したい考えだ。

■制度周知に力
 一方、同高専に生徒を送り出す長崎工業高校。卒業生320人のうち08年春は3人が同高専に進学する予定だ。ただ支援制度効果で「佐世保高専進学者が増えるかどうかは、フタをあけてみなければわからない」(同校)と手探りの状況。県の産業人材課では最初の編入生が卒業する2010年度で、県内就職者20人を目標に掲げる。現在、佐世保高専卒業生のうち県内就職者は毎年10人程度という。まずは高校へ支援制度の周知と地場企業へ賛同の輪を広げていく。
 地元で育てた人材を地元で生かす―。この長崎県の取り組みが地方都市の人材育成のモデルとなるか期待を集める。ただ経済支援はあくまで一つのツール。地域産業界自身が若者が集まる魅力ある仕事や雇用環境を同時につくっていかなければとの声も根強い。


【2008年2月28日 日刊工業新聞社】