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首都圏リポート/新東京タワー、墨田区に2011年完成−周辺事業計画が始動

 2011年に東京都墨田区に完成する新東京タワーに合わせた周辺事業の計画が、いよいよ動きだした。目玉は新タワーと両国や向島など区内の観光スポットを、環境に優しい超小型車などで周遊する次世代モビリティシステム構想。墨田区と早稲田大学、区内企業などでつくる「すみだ次世代モビリティ開発コンソーシアム」(勝田正文会長=早稲田大学理工学術院教授)が手掛ける。区内の中小企業にとっては、商機に結びつけていく積極的な姿勢が求められている。(東東京・堀田創平)

 【新しさと和の融合】

 すみだ次世代モビリティ開発コンソーシアムは07年秋、新システムのビジネスモデルとそこで使用する車両のデザインを全国から募った。計151件のアイデアから最優秀賞など5件を選出、19日に発表した。今後は実現に向けた課題を検証し、技術面などがクリアできれば事業体を設立して事業化する方針。

 デザイン部門の最優秀賞は、和風の外観でドア部分に水墨画をはめた川島剛さん(千葉大学4年)の「墨田と水墨画」。季節ごとに絵が替えられ、「タワーの新しさと和の心の融合」(川島さん)を狙ったものだ。

 ビジネスモデル部門の優秀賞は本郷修さん(千葉県船橋市在住)の「ヘキサイクルシステム」。貸自転車を搭載した電動バスを区内に循環運行させ、車内でICカードを使い利用手続きができる。自転車とバスの両方に全地球測位システム(GPS)を搭載しており、位置情報を元に好きな場所で乗り換え可能だ。移動範囲が広がり、起伏が少ない区の地形を生かした点も評価された。

 【早大と思惑が一致】

 次世代モビリティシステム構想は、水素エネルギーの活用を目指す早大と、新タワー周辺の街づくりを模索していた墨田区の思惑が一致して始まった。早大は水素の発生から運搬、車両への供給までの実証実験を行い、超小型燃料電池車も試作した。今回のコンペを通じて、勝田会長は「コンセプトを伝えやすくなった。スタートラインに立った」と強調する。

 ただデザイン部門へは143件もの応募があった半面、ビジネスモデルにはわずか8件の応募だった。デザイン部門は墨田区の特徴や構想のコンセプトを反映した作品が出そろい、大きな成果があがった。しかし、それを運用するビジネスモデルについては盛り上がりに欠けた。最優秀賞は該当がなく、優秀賞の1件以外は内容も公表していない。優秀賞の案件はアイデア自体はユニークだが、水素エネルギーの活用を目指す早大の方針とはやや方向が異なり、実現に向けクリアするハードルは多い。

 【地域ブランド確立も】

 墨田区は「タワーを降りた観光客がすぐ吾妻橋を渡って浅草(台東区)へ行ってしまうようでは、タワーを誘致した価値が半減する」(小久保明墨田区産業経済課長)と危機感を持っている。このためモビリティ計画と同時に、区内企業の作るユニークな製品を「すみだブランド」として確立させ、観光客にアピールする方針。構成業種などは検討中だが「ニットや伝統工芸など最終製品を足掛かりに、将来は"サポーティングインダストリー"にも展開したい」(同)考えだ。

 今後カギとなるのは、区内企業の経営者の間の温度差をいかになくしていくかだ。コンソーシアムの中心メンバーとして奔走する若手がいる半面、「タワーは本当にできるの」と、他人ごとのような声も少なくない。区内にはこの数年で廃業した中小製造業の工場跡地や、商店街の閉ざされたシャッターが目立つ。新タワー誘致というチャンスに対する地域企業の意識と商機を狙う機運の高まりが求められる。


【2008年1月23日 日刊工業新聞社】