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検証07/石見銀山、世界遺産に登録―一過性ブームを危惧

 6月28日にユネスコ世界遺産への登録が決定した石見銀山(島根県大田市)。5月にユネスコの諮問機関、国際記念物遺跡会議(ICOMOS)から登録延期勧告を受けながら粘り強いロビー活動で「逆転登録」、石見銀山ブームを巻き起こした。あれから半年、世界遺産登録は地元の観光振興にどう貢献したのか。一過性のブームに終わらせないため、地元で奮闘が続いている。

 4月、大田市は06年に申請した世界遺産登録をにらんで観光協会を一本化。本部を石見銀山の一角にある銀山公園の中に置いた。観光客増を見越し、町並み地区の中心の大森代官所跡から2キロメートル離れた所に、大規模駐車場「石見銀山駐車場」を新設した。これによって観光バスの駐車場を確保し、駐車場から町並み地区まで路線バスを走らせるパーク&ライド方式を本格化した。

 それでも認定以降は、急増する観光客をさばききれないのが実情。直後の7月は前年同月比約1.6倍の5万100人を集めた。夏休みの8月は10万人を突破。10月には早くも前年の40万人をクリア、紅葉シーズンの11月には15万人となった。

 観光バスも、キャパシティーの倍以上の30台を超える日が続出。大田市観光協会の田原博事務局長は「必死で対応したが、限度を超えていた」と振り返る。

 中でも一番の変化は、すべての観光客中、観光コースのハイライトとなる通り抜け坑道「龍源寺間歩」への有料入場者数の割合だ。06年は観光客全体の25%だったのが、50%まで増加。文字通り「押すな、押すな」の大盛況。

 これが災いした。手掘りの坑道の産業遺産としての貴重さや、町並み地区など周辺の風情をゆっくり楽しめないまま石見銀山を後にするツアー客が目立った。

 大規模宿泊設備がないことで滞在時間が短くなり、観光収入につなげられなかった。

 観光協会は観光バスの総量規制と、ホームページ上で駐車場の空き状況を逐次更新するなどの対策を急ピッチで進めた。加えて、滞在時間を確保するよう旅行代理店側に働きかけるなどして顧客満足度を向上、リピーター確保へ必死だ。

 ブーム継続への取り組みは、協会や行政だけではない。NPO法人「納川の会」は「IC小判」を開発した。桃山時代に毛利家が石見銀山から鋳造して天皇家に納めたという「御取納丁銀(おとりおさめちょうぎん)」を模した小判に、電子タグ機能付きICチップを組み込んだものだ。専用の箱にかざすと音声案内に活用できる。割引クーポンとしての活用法を模索している。

 混乱のうちに過ぎた半年を教訓に、08年は町おこしへ「勝負の年」となる。


【2007年12月26日 日刊工業新聞社】