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地域資源活用チャンネル

いきいき活用事例

鳥取

積極果敢な研究開発で和紙業界をリード

谷口和紙・谷口博文社長

谷口和紙・谷口博文社長

和紙の可能性を模索

 『因州筆切れず』という。因州和紙はきめが細かく筆運びがなめらかで、筆先も傷まない。このため、ふすま紙や障子紙として利用されているものの、書道用紙が圧倒的に多い。経済産業大臣指定の伝統的工芸品になっている因州和紙の起源は定かではない。しかし鳥取市青谷町(旧日置村)は、全国でもトップを争う和紙の産地として知られる。主原料の三椏(みつまた)や楮(こうぞ)が豊かで水にも恵まれている。明治政府の殖産振興で手漉(す)き和紙が発展、昭和20年代後半に書道用紙を中心とした一大産地を形成した。

 谷口和紙の原点も、谷口博文社長の祖父が大正後期にはじめた手漉き和紙。その後、実父が材料卸をする現在の谷口和紙を創業する。その父の急逝で勤めていた生命保険会社を辞め、急きょ帰郷し、24歳の若さで後を継いだ。

 和紙業者が軒を連ねる青谷地区にあって、谷口和紙は『現代に活きる和紙』をテーマに他社と一線を画す。和紙を自然素材紙にまで広げ、大学や公設研究機関との共同研究で機能性を高めた。さらにデザイン性を高めた「青谷和紙」を開発し、新しいマーケットに挑戦している。谷口社長は「和紙の可能性を引き出して、新しい日本様式を世界にプロダクトアウトしたい。新市場を切り開くのが当社のミッション」と力強く語る。

斜陽産業に危機感

従来の経験や勘だよりの製造技術を数値化し、生産管理や品質管理を徹底している

従来の経験や勘だよりの製造技術を数値化し、生産管理や品質管理を徹底している

 転機になったのは谷口社長27歳のとき。1975年、京都の大覚寺での「手漉き和紙青年の集い」に参加した。全国の産地から和紙に危機感をもつ若者が集まり、和紙はどうあるべきかを夜を徹して語りあったという。この集いで谷口社長が自分なりに出した結論は「伝統の枠に縛られない和紙の新しい商品づくり」だった。

 その後、83年の国際紙会議で、紙の立体成形を見た。これを機に研究開発型企業へとカジを切った。89年には半球形立体抄紙技術を確立し商品化した。93年、谷口和紙の研究開発部門を分離、独立、青谷和紙を設立した。抄紙機などを導入して工場研究所として稼働させた。「職人気質の経験や勘だよりの製造技術を数値化し、生産管理や品質管理を徹底した」(谷口社長)。これは高品質な量産を意図したものでなく、高付加価値の多品種少量生産を意識したものだった。数値化することで新しいモノづくりが展開できた。


有名デザイナーとのコラボレーション

工業デザイナーの喜多俊之氏がデザインした「AOYA washi lamp」シリーズ。「グッドデザインアワード2005」中小企業庁長官特別賞を受賞

工業デザイナーの喜多俊之氏がデザインした「AOYA washi lamp」シリーズ。「グッドデザインアワード2005」中小企業庁長官特別賞を受賞

 産学官連携にも積極的。鳥取県産業技術センターや鳥取県因州和紙協同組合青年部などとの共同研究で、筒形紙・半球紙・球形紙の製紙法の開発に成功。和紙の可能性に、磨きをかけた。国や県からも研究開発資金を得た。

 こうした試みが従来の和紙とは違う新しい製品を産み出すことになった。プリンター用紙、ラッピング用紙、ランプシェード、抗菌や消臭機能をもつ壁紙、ふすま紙など日常的でありながら斬新で目を引きつけるものが多い。ランプシェードは大手のインテリア関メーカーや照明器具メーカーなどに納入している。

 「染和紙」は雲肌模様が特徴のふすま紙で中小企業庁長官特別表彰選定品に輝いた。自然の土を漉き込んだ光触媒入りの壁紙とともに東リなどを通じて販売している。

 2004年、世界的に著名な工業デザイナーの喜多俊之氏のデザインによる「AOYA washi lamp」シリーズを発表。「グッドデザインアワード2005」で中小企業長官特別賞を受賞した。07年5月、経済産業省の「元気なモノづくり中小企業300社」にも選定されている。

 今後も和紙の本質と伝統を大切にしながら、現代人と価値を共有できる新しい和紙や和紙製品の総合プロデューサーとして世界へ発信していく。

【コメント】谷口博文社長
日本文化を世界に発信

 徹底的に掘り下げて自己検証する柔軟性が大切だ。同時に信念だけや思いこみ、独りよがり、物まねではだめだ。動体的にものを考え、キャッチアップされる前に動くということを常に念頭に置いている。

 本物志向的な時代が来ているからこそ、クオリティとしてブランド化したい。そのためには自己を鍛えあげなければならないと感じている。和紙を通して、日本的な空間の深み、半透明な空間を国内外に訴えていく。ハードでなく普遍的な高い文化を売る。文化型産業がロングレンジで地域の力を発揮できる。鳥取の地にありながら日本の和紙をリードし、世界へ発信していきたい。

会社概要

会社名:谷口和紙株式会社
住所:鳥取県鳥取市青谷町河原358-1
業種:和紙製造業
電話:0857-86-0116