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地域資源活用チャンネル

いきいき活用事例

東京

職人技とエコに活路

松徳硝子・村松邦男社長

松徳硝子・村松邦男社長

世界が認めたうすはりグラス

 松徳硝子は全国でも数少ない手ふき硝子メーカー。手ふき硝子はガラス作家の工房こそ増えているが、企業として成り立っているところはごくわずかだ。熱い、汚い、危険など、仕事としてはきわめて厳しい作業環境にある。「作家志望者も働きたいと来るが、それで勤まるほど甘くない」(村松邦男社長)とすべて断る。同社を支えているのは極限まで突き詰めた職人技と、伝統産業に環境という切り口を融合させた新しい取り組みだ。

 松徳硝子の製品は六本木ヒルズなど国内の話題スポットをはじめ、ニューヨークやラスベガス、ミラノなど世界の流行を作り出す都市の、多くのセレクトショップに並んでいる。これらの店舗で売られているのは、ほとんどが2つのシリーズ商品だ。1つは薄さ1mmを切る極薄ガラスの「うすはりグラス」。もう一つが、使用済み蛍光灯を再利用した「e-glass」だ。

 うすはりグラスは現在6、7人の職人が1個1個手掛けている。「大正時代の創業期から電球用ガラスをつくっていた。その技術を突き詰めて完成した」(同)ものだ。氷がグラスにぶつかる音や、飲み物の"息吹"までが伝わりそうな、軽く繊細なグラスだ。しかし薄いからといって特に割れやすくはないとか。高度な技術で全体に均一に吹かれており、衝撃が分散するからだろうか。

 「(うすはりが)できるか、できないかは職人の感性や勘による。30年やってもできない人もいるし、数年でマスターした人もいる」(同)という。経験だけではできない極限のグラスということになる。工場では東京都の優秀技能者(東京マイスター)の片桐久夫氏らベテランが黙々とガラスを吹く。その中に、匠の技を盗もうとする若手が交じり、常に真剣勝負の緊張感が漂っている。

 「もちろんロボットに作らせればできるだろうが、それではまったく意味がない」(同)。うすはりは、伝統の技を後生に伝えるための手段ともなっている。

ガラス製品で初めてエコマーク取得

ベテランに交じって若者も真剣勝負

ベテランに交じって若者も真剣勝負

 一方のe-glassは金沢市の電機・照明工事業であるサワヤが開発した使用済み蛍光灯の水銀の無害化技術を生かしたものだ。この無害化されたガラス原料に真っ先に目を付けた。最初は材料の大きさが揃わないリサイクルガラスの宿命で、「どうしても中途半端に気泡が残ってしまった」(同)。完ぺきなものを目指し、歩留まりを上げようとするとコストがあわなくなる。欠点を逆手に取る方法を模索し墨田区の産業経済課に相談、ガラスデザイナーの毛利夏絵さんを紹介してもらった。

 毛利さんはやさしく柔らかい感じのガラスが得意だ。閉じこめられた気泡が滴のように感じられるデザインに挑戦し、硬いガラスをみずみずしく見せることに成功、新感覚のエコグラスが誕生した。伝統の技と材料のリサイクル技術、そしてデザイナーの感性で、廃棄物が日々使えるデザイン性の高い商品に生まれ変わったのだ。

 このガラスは台東、荒川、墨田、江東の4区が行う現代の生活にマッチした優れた工芸品を選ぶコンテスト「第1回伝統的工芸品チャレンジ大賞」に輝いた。また、ガラス製品で初めて日本環境協会のエコマーク認定を受けたこともあり、各地のグリーン購入ネットワークの対象製品になるなど全国的な広がりを見せている。今や、うすはりと並び同社を支える経営の柱となっている。

【コメント】村松邦男社長
売れて初めて意味がある

 手ふきガラスが産業として成り立つのは難しい。今の時代、ガラスに限らず大方のものは機械でつくるほうが安く、確かなものができる。手づくりでないとできないもの、さらにそこに新しい価値を生み出さないと、伝統産業というだけでは生き残れない。作品ができてもだめだ。売れて初めて意味がある。

 かつては営業マンがいて全国のガラス店を回っていたが、価格だけで中国製に負けてしまった。このため今はミニミュージアムやギフトショーへの出展など、情報発信型に切り替えた。
 営業マンによる無理な売り込みをやめ、問屋にも依存せず、直接セレクトショップなどに卸している。バイヤーの反応を見ながら、新しいものに挑戦していく。ただ大きいところとは振り回されるだけなのでやりたくはない。

会社概要

会社名:松徳硝子株式会社
住所:東京都墨田区錦糸4-10-4
業種:製造
電話:03-3625-3511
URL:http://www.stglass.co.jp/