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地域資源活用チャンネル

いきいき活用事例

沖縄

村おこしから誕生した、沖縄みやげの定番「紅いもタルト」

お菓子のポルシェ・澤岻カズ子社長

お菓子のポルシェ・澤岻カズ子社長

最初は認知されなかった紅芋のお菓子

 那覇から国道58号線を北上し、残波岬に通じる県道6号線に入る。サトウキビと紅芋の畑が海岸まで迫り、沖縄らしい長閑な農村風景が広がる。緑の海を漕ぐように農道を行くと、琉球舞踊の「花笠」を象った玄関屋根の朱色が目に飛び込んでくる。お菓子のポルシェ読谷本店である。1階はお菓子売り場とカフェテリア。ガラス越しに「紅いもタルト」の製造工程を見学できる。

 澤岻カズ子社長が手作り洋菓子店から事業を興し、創業28年で年商30億円(2007年7月期)、従業員300人の規模に成長した。今も年率20%成長を続け、今期(08年7月期)は35億円が目標という。那覇空港や国際通り(那覇市)、恩納村など県内8カ所に直営店を構え、製造工程を顧客に見学してもらう「お菓子御殿」(恩納村)が集客を後押しする。

 成功の理由は、「地産(読谷特産の紅芋を使用)」、「無添加(合成保存料は一切使わない)」、「新鮮(直営店販売へのこだわり)」を貫いてきたこと。加えて澤岻社長がここ一番で見せる度胸の良さだろう。「お菓子御殿」は年商9億円だった01年当時、沖縄県の制度融資を活用し、総工費13億円を投じて建設した。

 沖縄みやげの定番となった「紅いもタルト」は、読谷村の村おこしから誕生した。「村特産の紅芋でお菓子が作れないか」。手作り洋菓子店を営んでいた澤岻社長のもとに、読谷村商工会からこんな依頼がきた。紅芋を使ったお菓子は世の中にない。紅芋ペーストでタルトや羊羹、シュークリームをつくり、百貨店の関係者に見せたところ、「とても食べ物の色ではない。合成着色料を使っているの?」と厳しい反応が返ってきた。当時、本土では紅芋に馴染みがなく、紅芋特有の紫色には抵抗感があった。だが沖縄を発つ旅客機の機内食に採用されたのをきっかけに、口コミで評判は広がった。

「地産」、「無添加」、「新鮮」へのこだわり

紅芋から作ったお菓子、「紅いもタルト」など

紅芋から作ったお菓子、「紅いもタルト」など

 「地産」、「無添加」、「新鮮」のポリシーを貫くには、品質を安定させなければならない。それは紅芋につく害虫、イモゾウムシとの悪戦苦闘から始まった。イモゾウムシとともに紅芋を蒸し上げると悪臭が発生する。1匹でも混ざっていると300kgの紅芋が使い物にならなくなる。検査の精度を上げるには最終的に手作業に頼るしかなく、現在は4名のスタッフが包丁で蒸しあがった紅芋を刻み、目視で確認している。紅芋の収穫時期を早め、なるべくイモゾウムシがつかない紅芋を使う工夫もしている。

 化学反応による変色にも苦しめられた。紅芋から作ったペーストは酸性のレモン汁などにふれると、見る見るうちに紫がピンクに変色し、見た目のフレッシュ感が損なわれてしまう。ベーキングパウダーに反応すると、さらに厄介なことになる。緑に変色するため顧客から「カビが生えている」とクレームをつけられたこともあった。製粉メーカーに紅芋の成分に反応しないパウダーに改良してもらい、問題は解決できた。

 最近、澤岻社長が頭を痛めるのはコピー商品問題である。「紅いもタルト」は商品化する際に商標登録してなかったため、商品名、形状がほとんど変わらない商品が複数出回っている。同社がつかんでいるだけでも6社が類似品を販売し、販売差し止めを求め係争に発展しているところもある。

 類似品のなかには合成保存料を使用し、常温で2カ月でも3カ月でも日持ちするものもある。「紅いもタルト」が地域ブランドとして定着している今日、商標権を主張するのは難しそうだが、「粗悪品が出回ることで紅いもタルトのイメージが悪くなっては困る」(澤岻英樹常務)と徹底的に争う構えだ。苦労して築き上げてきた「地産」、「無添加」、「新鮮」への信用を守る闘いでもある。

【コメント】澤岻カズ子社長
官民が1つになり、一過性で終わらせてはいけない

原材料の紅芋

原材料の紅芋

 紅芋を使ったお菓子作りは、読谷村のお菓子屋がやるしかない。やるからには村に迷惑はかけられない。何が何でも成功させなければならない、と自分に言い聞かせながらやってきた。

 最初は品質の良い紅芋を調達するのに苦労した。なかなか鮮やかな紫色が出ない。自然のものだから気候や土壌で品質は変化する。無添加、無着色をコンセプトにしている以上、品質のバランスは保たなければならない。

 地域資源を活用した事業は、企業だけでは成功しない。村も商工会も官民が1つになり、リスクを負いながらも売れるまで作り続けることが大事。片時も休むことなく努力を続けなければ、一過性で終わってしまう。

 紅芋を購入し、皮をむいて、ペーストに加工し、お菓子に仕上げるまでにはたいへんな手間暇がかかる。できあいの材料を購入してしまえば楽だが、村おこしから事業を始めた責任がある。地元のものを使わなければというこだわりがある。苦しいときは読谷村への思いが支えになった。

会社概要

会社名:株式会社お菓子のポルシェ
住所:沖縄県中頭郡読谷村字宇座657-1
業種:菓子製造・販売
電話:098-958-7333
URL:http://www.okashigoten.com